2017 Fiscal Year Annual Research Report
高CO2条件下における水田生態系の持続可能性を支配する土壌の窒素可給性と炭素貯留
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16F16398
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (80456748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GUIGUE JULIEN 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター・気候変動対応研究領域, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 炭素同位体トレーサー / 土壌炭素動態 / 土壌窒素動態 / 水田生態系 / 土壌有機物 / 可溶性有機物 / 比重分画 |
Outline of Annual Research Achievements |
【土壌炭素貯留】●昨年度、つくばFACE土壌の0,2,4年目のFACEおよび通常CO2濃度(Amb)区土壌の比重分画が完了し、各土壌の比重画分の回収率の確認がとれていた。これらのデータ解析から、先ず高CO2条件で水稲生育が高まっても、4年間で土壌炭素および窒素貯留量を高めるほどの効果はないことが分かった。作物残渣や根の滲出物などは易分解性炭素ということが知られているため、想定通りの結果である。 ●更に本年度は、0, 2, 4年目のすべての比重画分の安定同位体炭素(d13C)の分析を行った。炭素収支計算を行い必要に応じて再分析を行い測定誤差を最小限度に縮めた後、FACEおよびAmb区の比較、およびFACE区土壌での0年から4年目への比較から、FACE実験由来の新しい炭素(New C)がどの画分にどの程度の速度で移行・蓄積していったかを推定した。 ●半分以上のNew Cが高比重画分(土壌鉱物と結合した炭素画分)に移行していたため、更に「New Cはこの画分の中でも有機物と反応性が高いとされる非晶質鉱物と選択的に結合する」と仮説を立て、この鉱物成分を選択的に溶解させ、その残渣のd13C測定から検証した。意外にも非晶質鉱物へ結合した炭素とそれ以外の炭素のd13C値は、高い精度をもって同等であった。よって多くの研究で炭素蓄積に重要と示唆される非晶質鉱物は、本水田土壌においては特別に安定化に寄与している訳ではないことが分かった。
【土壌窒素の可給性】 ●土壌中の易分解性有機態窒素の推定法は確立していないため、文献調査から中性リン酸緩衝抽出法を採用した。水稲生育ステージに応じた6タイミングでの土壌サンプルを対象に抽出態(可溶性)有機炭素・全窒素を定量したところ、どちらの濃度にも一貫した経時変化は見られなかった一方で、C:N比は上昇を示したことから、易分解性有機物の質的変化が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の概要の通り、計画通りに研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
●最終年度となるため、既にデータが出そろった土壌炭素研究の論文化を急ぐ。土壌炭素貯留の研究は近年著しく進んでいるが、酸化条件と還元条件が毎年繰り返される水田土壌環境における土壌炭素の貯留過程についての知見は非常に限られているため、FACE由来のC-13トレーサーと比重分画法を組み合わせた本研究から、新規性の高い成果が出せると期待している。
●土壌窒素の可給性については、上述の可溶性有機物のC:N比に水稲生育シーズン中の経時変化が検出されたため、更にその質的変化の実体解明を目指す。具体的には、溶存有機態窒素の分子サイズ分布の測定や核磁気共鳴法を用いた炭素構造の評価を検討する。
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Research Products
(2 results)