2017 Fiscal Year Annual Research Report
Behavioral study of planktonic larvae of decapods - towards fisheries resource management and measures to climate change
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16F16401
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 祐志 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90207150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LANDEIRA SANCHEZ JOSE 東京海洋大学, 学術研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 十脚類 / 幼生 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
海産十脚類浮遊幼生について、種別及び発育段階別の鉛直分布だけでなく、種毎に異なる行動特性が現場の空間分布に如何に作用しているかを調べることを目的として、野外調査と室内実験を行った。現場における空間分布を定量化するために、種同定が確実な数種について、東京海洋大学の実習艇や練習船を活用し、NORPACネット(北太平洋標準ネット)や MOCNESS(開閉装置および環境センサ付き層別動物プランクトン定量採取ネット)といったプランクトンネットによるサンプリングや、層別定量ポンプ採水を実施した。さらに、他機関で採取されたベーリング海、北極海、大西洋の標本も調べた。また、行動を定量化するために、プランクトンネット等で得られる生物資料を生きたまま、あるいは、東京湾の護岸で採取される十脚類成体から孵出させた幼生を実験室で維持培養し、高速度ビデオカメラ撮影等によって遊泳の状況を記録し、解析した。 これまでに、東京湾および相模湾から相模灘に至る海域における十脚類浮遊幼生の出現種を調べ、また、特に、東京湾の沿岸で普通に見られるタカノケブカイソガニHemigrapsus takanoiの幼生について、実験室での維持培養手法を確立した。 実験により、高速ビデオカメラを用いた行動観察と動画解析により、本種幼生の行動について、とくに水温と塩分に依存して異なる様相を示すこと、また、幼生が種毎、発育段階毎に特有の行動特性を示すことが認められた。さらに、浮遊生物の種間関係を調べた結果、捕食-被食の関係が鉛直分布の形成に影響している可能性が推測された。特に、十脚類を含む節足動物の天敵であるクラゲ等の刺胞生物と十脚類幼生との相互関係が重要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現場調査 東京海洋大学練習船神鷹丸ならびに実習艇ひよどりによる現場調査を実施し、幼生の空間分布に関する観測データを得た。補助的に、他機関によってベーリング海と北極海から採取された標本も調査した。5月には、相模湾において水面から200 m深までを8層に分けた層別定量採集を実施し、標本を得た。さらに9月には、羽田沖水深25 mの位置にひよどりを錨泊させ、水面から海底付近まで1 m毎の各層から0.5トンの海水を汲み上げ、プランクトンを採取し、定量的な鉛直分布調査に成功した。この調査は、24時間、4時間毎に行われた。 室内実験 東京湾護岸から採取されるタカノケブカイソガニの成体を実験室で維持培養し、浮遊幼生を得ることに成功した。さらに、そうして得た浮遊幼生の行動様式を、高速度ビデオカメラ撮影等によって記録し、解析することが出来た。この解析では、通常のビデオ撮影では観察できない短い時間間隔内に起こる微妙な行動の様式と水温と塩分がどのように影響しているのかが調べられた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、東京湾および相模湾から相模灘に至る海域における十脚類浮遊幼生の出現種を調べ、また、特に、東京湾の沿岸で普通に見られるタカノケブカイソガニHemigrapsus takanoiの幼生について、実験室での維持培養手法を確立した。 今年度は、5月と7月に海洋大の練習船「青鷹丸」と「神鷹丸」で、それぞれ相模湾の日本海でサンプリングを行うとともに、4月から9月まで、タカノケブカイソガニの幼生の成長と生残および発育段階別の行動様式が海水温と塩分にどのように対応しているかを実験的に調べる。 固定標本とともに生体標本を持ち帰り、陸上(東京海洋大学内)の実験室において出現種を確認し、並行して、生体の安定した飼育手法を確立させながら、目視ならびに通常のビデオカメラおよび高速度ビデオカメラによる撮影を行って、十脚類浮遊幼生の行動の水温・塩分依存性を明らかにするための実験を進める。さらに、海洋大浮遊生物学研究室で生産しているミズクラゲのエフィラ幼生の捕食圧が十脚類幼生の発育段階毎に、また、水温、塩分や光環境、さらに飢餓/飽食などとどのように対応して影響するのかを,観察実験によって調べる。 幼生の飼育や行動実験には、東京海洋大学内の「水族環境調節施設」を活用する。 出現種に関する調査の成果は、9月に開催される日本海洋学会において発表する。行動に関する実験の成果は、研究期間終了直後の水産海洋学会あるいは日本プランクトン学会等で発表する。
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Research Products
(3 results)