2016 Fiscal Year Annual Research Report
Control of Drosophila endocycle by Apontic and Ubx
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16F16703
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
鈴木 えみ子 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 准教授 (20173891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WANG XIAN-FENG 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-07-27 – 2018-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 唾腺 / endocycle / Apontic (Apt) / E2F / Cyclin E |
Outline of Annual Research Achievements |
endocycleは、間期(G)、DNA合成期(S)、分裂期(M)からなる通常の細胞周期と異なり、GとS期のみから成る。細胞が分裂しないので、endocycleが続くと細胞当たりのゲノムDNA量が増加し、巨大な細胞と成る。endocycleは、ヒトを含む動植物に広く観察され、細胞の効率的な機能分化を可能にする重要なシステムである。我々は、ショウジョウバエの唾腺細胞で転写因子Apontic(Apt)が、endocycleに重要なCyclin Eの発現制御に関わることを見出した。この発見に基づき、Aptによるendocycle制御の機構を解明することが、本研究課題の目的である。 平成28年度はendocycleにおけるAptとE2Fの役割について解析した。apt機能欠失変異により、endocycleが阻害されることを見出した。既に転写因子E2Fが、cyclin E遺伝子の転写活性化を通してendocycleに関わることが報告されている。しかし、E2Fの機能欠失によりendocycleは抑制されるが、完全に停止するわけではない。従って、AptとE2F両方がendocycleに必要と考えられる。cyclin E遺伝子上流にはAptとE2F結合配列がクラスターを成して存在する領域が有る。この領域を介してAptとE2Fがcyclin E遺伝子の転写を制御しているため、両方共にendocycleに必要と予想される。さらに、AptのRNAiによりE2Fの発現が、E2FのRNAiによりAptの発現が低下することが判明し、AptとE2Fの発現が相互に依存していることを見出した。この発見は、S期の進行に伴ってE2Fがユビキチン系を介して分解されると、Aptの発現も無くなることを示唆しており、注目に値する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のendocycle研究では、E2Fの重要性だけが強調されてきたが、本研究により、Aptもendocycleに必要なことが判明した。しかもAptとE2Fの発現が相互に依存していることはendocycleの進行に関わる興味深い発見である。S期の進行に伴ってユビキチン系によりE2Fが分解されると、Aptの発現も無くなり、cyclin Eの転写が停止して次のDNA複製サイクルのための準備が整うからである。 唾腺におけるcyclin E遺伝子の発現制御領域は未同定であったが、本研究により、cyclin E遺伝子上流にAptとE2F結合配列がクラスターをなして存在する領域が有ることが判った。この領域を含むレポーター遺伝子を作成してその発現を唾腺で調べることにより、未同定だった発現制御領域を解析できる。さらに、AptやE2F結合配列に変異を導入してこれらの因子の結合がcyclin E遺伝子の発現に果たす役割を解析する道が開けた。これも重要な進展の一つである。平成28年度の研究成果から、E2F機能欠失変異はE2F機能の欠失だけでなく、Aptの発現消失も伴うことが判明したので、変異の表現型がどちらの効果なのか区別できない。従って、DNA上の結合配列の改変による解析は重要な意味を持つ。
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Strategy for Future Research Activity |
cyclin E遺伝子上流に有るAptとE2F結合配列がクラスターをなして存在する領域を含むレポーター遺伝子を作成してその発現を調べることにより、未同定だった唾腺におけるcyclin E遺伝子発現制御領域を明らかする。次に、Apt、E2F結合配列に変異を導入してこれら因子の片方、もしくは両方の結合をなくした時の効果を調べ、cyclin E遺伝子発現に果たすAptとE2Fの役割を明らかにする。 apt遺伝子の上流にはE2F結合配列が、E2Fの発現制御領域にはAptとE2Fの結合配列が存在する。レポーター遺伝子を作成してこれらの結合配列がAptやE2Fの発現に果たす役割を解析し、AptとE2F発現の相互依存性のメカニズムを解明する。このメカニズムが解明されれば、S期の進行に伴ってユビキチン系によりE2Fが分解されると、Aptの発現も無くなり、cyclin Eの転写が停止して次のDNA複製サイクルのための準備が整うことが説明可能となる。その場合、平成29年度に予定していたCks30AやUbxの機能解析は不要となる。 もし上記のメカニズムを解明できなかった場合には、csk30Aの機能欠失変異により、唾腺でCyclin Eの分解が抑制されるか調べる。具体的には、唾腺でApt、Cyclin Eの存在とEdUの取り込みを蛍光染色により検出し、各細胞で染色強度を定量する。結果をEdU vs Apt、EdU vs Cyclin E、Cyclin E vs Aptでプロットし、S期(EdUのピーク)との継時的変化を推定し、野生株とcks30A変異株を比較する。こうしてAptによるCyclin Eの発現上昇と、Apt下流のCks30AによるCyclin E分解が継時的に起きて、Cyclin Eレベルの振動が生じる可能性を検証する。
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Research Products
(1 results)