2016 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属カルコゲナイド材料の創製と磁気的・熱電的性質の解明
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16F16706
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
森 孝雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA主任研究者 (90354430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VANEY JEAN-BAPTISTE 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-07-27 – 2018-03-31
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Keywords | 熱電材料 / カルコゲナイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鉱物カルコゲナイド材料を合成して、熱電的性質を解明して高性能化研究を進めると同時に、磁性との相関を解明することを目的としている。磁性との相関を調べることで、高性能化を加速できることが期待される。初年度の28年度の研究実績として、CuFe2Te4とCuFeTe2の合成を進める一方で、関連するCuGdTe2(GdCuTe2)に着目した。GdCuTe2は、単斜晶の層状化合物で、高品質な試料を合成して、熱電的性質(電気伝導度、ゼーベック係数、熱伝導度)を解明した。GdCuTe2において、きわめて低い熱伝導率(300 Kにおいて0.5 Wm-1K-1)が観測され、その起源として、結晶構造において、Cu原子による乱れを含む副格子を有することによるためと解明した。また、大きなゼーベック係数(300 Kにおいて>200 ミクロボルト/K)が観測されて、低い熱伝導率と合わせて、室温近傍で良好な熱電的性質(性能指数ZT~0.2)が見出された。さらに、合成条件によって、GdサイトやCuサイトの占有率の制御にも成功して、より高性能が得られる道筋も明らかにした。特にCuサイトの変動幅が大きいことを見出した。本研究の成果は、2つの学会(国内学会と国際会議)で特別研究員筆頭で発表が行われて、現在論文執筆が進んでいる。 一方で、熱電的性質と磁性との相関に関しては、鉱物硫化物CuCr2S4に関して、解明研究を担当して、磁性による大きな有効質量が高性能な熱電的性質に寄与していることを見出して、優良ジャーナルChemistry of Materialsに共著論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況は概ね良好に進んでいると考えられる。その理由として、既に、鉱物カルコゲナイド材料において、熱電高性能の有望な系を見出すことに成功している。具体的には、GdCuTe2という新規な系で比較的低温での高性能を見出して(300 Kで性能指数ZT~0.2)、結晶構造の制御、すなわち両方の金属サイトの占有率の制御にも成功して、より高性能化への道筋も見出している。より中高温でより高性能を示す材料は多いが、半世紀熱電の世界で室温近傍のチャンピオンとして君臨しているビスマステルライド系材料を脅かす材料がないだけに、今後の発展が期待される。 また、熱電的性質と磁性の相関を調べることも大きな目的であるが、他の鉱物硫化物系CuCr2S4において、熱電的性質と磁性の相関を解明した研究実績によって、ハイインパクトのジャーナルChemistry of Materialsの共著論文も既に出版されたのも順調な進捗である。 国内、国際会議共に筆頭の研究発表を行っており、これに関わる論文執筆も進んでおり、上記の論文出版と合わせて順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に見出した熱電的性質の有望な系GdCuTe2に関して、合成条件によって、GdサイトやCuサイトの占有率の制御を進めて、熱電高性能化研究を進捗させる。また、CuFe2Te4とCuFeTe2の高品質試料の合成を最適化して、熱電的性質を解明する。また、これまで得られた知見を活用して、熱電的性質の有望そうな他の鉱物カルコゲナイド系も発掘して、合成と物性解明と高性能化研究を進める。これらの化合物に関して、磁気的性質の評価も進めて、熱電的性質との相関もさらに解明して行く。新たな研究項目として、これらの化合物に関して、熱電高性能化につながるようなナノ・ミクロ構造制御のプロセスの研究も進める。ナノ・ミクロ構造によってフォノンの選択散乱が実現すれば大幅な高性能化が期待できる("Thermoelectric Nanomaterials", ed. K. Koumoto and T. Mori, Springer Series in Materials Science (Springer, Heidelberg, 2013))。 本研究で生み出される研究成果の特許出願の可能性を検討して、学会発表を活発に行いながら、論文を速やかにまとめて出版発表する。
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