2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16F16708
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野牧 秀隆 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 主任研究員 (90435834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LANGLET DEWI 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-07-27 – 2019-03-31
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Keywords | 底生有孔虫 / 貧酸素 / 硝酸塩呼吸 / DNRA |
Outline of Annual Research Achievements |
貧酸素環境に生息する真核微生物、有孔虫の低酸素環境での生存戦略について、有機物に乏しい深海域では硝酸塩呼吸によりエネルギーを獲得するのに対し、有機物に富んだ浅海域では硝酸塩をアンモニアに異化的に還元するDNRAを行っているという仮説を明らかにするため、今年度は特に地球化学的な解析を行った。沿岸域、および研究船を用いて深海域から底生有孔虫を含む底泥を採取し、特に、以下の2点についての実験系の立ち上げ、解析を行った。1点目は、有孔虫による酸素呼吸速度、硝酸塩呼吸速度を解析するための、微小ガラス電極+マイクロプロファイリングシステムの立ち上げである。外国人特別研究員がフランス、デンマークで使用していた形式を参考に、多少の改良を加えてセットアップを行い、沿岸域および深海底に生息する底生有孔虫の酸素呼吸速度、硝酸塩呼吸速度についての予察的な結果を得た。2点目は、堆積物の間隙水および底生有孔虫細胞内の窒素系栄養塩濃度の定量である。海水に用いられている栄養塩濃度定量方法を用いて、堆積物の間隙水の栄養塩濃度を希釈して測定したほか、より少サンプル量の有孔虫細胞内窒素系栄養塩濃度を定量するため、実験系をより微小スケールに改良し、微少量の試料での定量およびその精度について検討を行った。その手法を、前述の浅海で採取した有孔虫に適用し、一個体ごとの定量性の評価や同位体比測定に必要な個体数について検討した。 また、9月に行われた、現生の有孔虫の生物学、生態学、地球化学の研究者らが一堂に会するLiving foraminiferal workshopに参加し、研究計画について発表、議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のように着実に成果を上げている一方で、以下の2つの原因により、当初予定より若干研究計画に遅延がある。 深海の底生有孔虫試料の採取については、外国人特別研究員の来日直後の8月に試料を得る予定であったが、台風及び船舶の推進機の故障により、試料を得ることができなかった。そのため、代替のサンプリングについて手配をし、11月に試料を得たため、深海の有孔虫の解析状況は遅れている。 また、浅海の有孔虫試料についても、当初見込みよりも生息密度が低く、大量に試料数を必要とする、有孔虫細胞内の窒素系栄養塩の同位体比測定には至っていない。一方で、1個体で測定が可能な各種分析については着実に研究を進捗させている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、引き続き浅海および深海の有孔虫試料について細胞内の栄養塩濃度の定量を行い、必要な窒素量の得られる種類については、窒素同位体比の測定も行う。試料は、干潟の有孔虫に加え、6月初旬に採取する予定の相模湾深海底水深750m、8月に採取する予定のベーリング海の水深100m-1500m、の深海域の試料を用いる。特に、ベーリング海の試料は有機物に非常に富んだ海底―徐々に有機物が減少する海底であることが想定されることから、有機物濃度の違いが脱窒およびDNRAの活性に影響を与えている可能性を検討するのに適した飼料である。また、ベーリング海での航海については、船上に微小ガラス電極を持ち込み、船内の冷蔵室で深海環境の温度を保ったままでの脱窒速度測定を行うとともに、それらの個体の栄養塩濃度定量用・微生物相解析・細胞内微細構造観察用に各種の固定、保存を行う。固定した試料について、共同研究者と共に細胞内微生物相の解析を行ない、脱窒が行われている種について細胞内に共生細菌はいるのか、またいるとすればどの系統に属する細菌なのかを明らかにし、有孔虫細胞内での脱窒への微生物への関与を検討する。また、細胞内微細構造を透過型電子顕微鏡により観察し、酸素濃度および細胞内栄養塩濃度の違いにより、硝酸塩をため込むとされる液胞や、貧酸素環境で特異的にみられる細胞小器官の比率、配置の変化を検討する。結果については逐次まとめ、国内学会での発表や論文化を行う。
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[Journal Article] Sequestered chloroplasts in the benthic foraminifer Haynesina germanica: cellular organization, oxygen fluxes and potential ecological implications.2017
Author(s)
Cesbron F., Geslin E., LeKieffre C., Jauffrais T., Nardelli M.P., Langlet D., Mabilleau G., Jorissen, F., Jezequel, D., Metzger E
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Journal Title
Journal of foraminiferal research
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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