2016 Fiscal Year Annual Research Report
日本における神社建築に関する学説の諸相と「神社」に関する建築的研究
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16F16713
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
西田 雅嗣 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (80198473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SAHBAN ILHAM 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-07-27 – 2018-03-31
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Keywords | 神社 / 社殿 / 境内 / 神道 / アニミズム / 祭礼 / 学説史 / 自然 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の大きな目標は、現代日本人研究者の手になる古典的重要文献の精選・精読・仏訳、アンソロジー作成であった古典的重要文献の精選、精読に多くの時間が割かれることになり、仏訳、アンソロジー作成までには至らなかった。しかしながら、当初は重きを置いていなかった、欧語で書かれた神社建築・神社・神道に関する文献収集・精読、現在の新しい神社建築や神道に関する日本人の手になる文献資料の収集と読解に予想以上の進展を見た。また、出雲大社や厳島神社を始めとする重要神社を現地に巡検し、とりわけ、こうした神社の祭礼時に積極的に巡検を行い、あまり知られることのない神社建築の側面対して、文化人類学的方法と興味から多くの新知見を得た。 日本人の手になる古典的文献に関しては、福山敏男と稲垣栄三の著作集を入手し、神社建築に関する現在の日本人研究者たちが共通に基盤とする古典的論説を渉猟し、フランスでの神社建築紹介にふさわしい仏訳すべき論文を選定した。本格的な翻訳作業やアンソロジーとしての出版物の編集作業は次年度に持ち越される。 代わりに本年度に大きな進展を見た文化人類学的な現地踏査では、著名な大規模社殿のみならず、小規模なローカルな社殿にも注目し、とりわけ季節ごとの祭礼と社殿・境内の役割との関係に、従来の建築史家たちが形成してきた建築に関する古典的定説とは別の側面からの神社建築理解の可能性の手応えを得た。これは、外国人特別研究員本人が、本学で博士論文としてまとめた研究時より注目していた「自然要素と神社建築」という研究にさらなる展開をもたらすものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった日本人の手になる古典的著作からのアンソロジー作成には至らなかったが、アンソロジー作成のためのテキスト選定に多くの時間とエネルギーをかけ、当初想定していた以上の理解に達することができた。また、この理解は、次年度に持ち越されるが、選定テキスト仏訳、アンソロジー作成に寄与するところが多きはずである。 当初それほど期待をかけていなかった欧語文献の収集に期待以上の成果をみた。また文化人類学的方法と興味からの祭礼と建築に着目した現地巡検は、本研究の出発点である外国人特別研究員本人が、本学で博士論文としてまとめた研究をさらに添加するものとして、当初より本人が今日を見せていたことでもあり、この方向への展開の可能性が得られたので、研究は順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初目標を達成すべく、持ち越しとなった日本人の手になる古典的著作からのアンソロジー作成を完成させる。精読をベースにした共同での仏訳で、これを実行する。また、フランスでの神社建築紹介のために、このアンソロジーの出版準備にも着する。当初計画通り、外国人特別研究員本人が、本学で博士論文としてまとめた研究をベースにしてこれをブラッシュアップしたテクストを作成し、これもフランスでの出版に耐えられるようなものとして準備する。この際、平成28年度の現地巡検研究で得た成果である「季節ごとの祭礼と社殿・境内の役割」や「自然要素と神社建築」という観点での社殿建築論を加味する。フランスでの研究発表も、可能であれば行いたいと考える。
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