2017 Fiscal Year Annual Research Report
Integrability in the analysis and computation of scattering amplitudes/Wilson loops in gauge theories
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16F16735
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 克司 東京工業大学, 理学院, 教授 (60221769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PISCAGLIA SIMONE 東京工業大学, 理学院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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Keywords | ゲージ重力対応 / Wilsonループ / 演算子積展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
N=4超対称Yang-Mills理論において,グルーオンのN点オンシェル散乱振幅はN個の光円錐辺をもつ多角形Wilsonループの期待値と等価である。任意の多角形Wilsonループは基本的な5角形Wilsonループの演算子積展開として表され, 5角形Wilsonループは中間状態に現れるフラックスチューブの励起状態の動力学で決定される。励起状態はスカラー、フェルミオン、さらにその束縛状態である中間子があり, これまでの研究によりフェルミオンの寄与が古典的な部分の寄与と同程度であるという予想外の結果が判明している。 今年度は以上の成果を踏まえ、特に6角形Wilsonループの演算子積展開について研究を行い、以下の新しい結果を得た。(1) スカラーの寄与を系統的に行い, SU(4)行列因子についてのYoung図形の寄与を足しあげることでその評価式を得ることができた。(2) 強結合における6角形Wilsonループについて, スカラーの寄与は5角形にツィスト場を挿入した形状因子の2乗の形になっており、この形はオメガ背景場におけるN=2超対称ゲージ理論のNekrasov分配関数のNekrasov-Shatashvili極限と極めて類似した構造を持っている。この類似性と(1)のYoung図形による手法を組み合わせることにより、フェルミオンと反フェルミオンの束縛状態の中間子状態の寄与を決定することができ, ゲージ重力対応から期待される極小曲面の面積の一致することが示された。(3)6点振幅と円錐的な特異性を有するツイスト演算子の構造因子を対応関係を調べ、どのような演算子が該当するかを構造因子が満たす公理系の立場から考察した。 以上の成果により多角形Wilsonループの可積分構造についてより詳しい知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は5角形演算子積展開の方法 に基づいて強結合領域における多角形Wilsonループの期待値に対する量子補正を系統的に評価することを目的としている。特にこの方法とN=2超対称 ゲージ理論のオメガ背景場の下で変形されたNekrasov分配関数の公式の類似性に着目し、可積分性に基いた強結合領域における ゲージ理論の新しい理解を目指している。 本研究により, Wilsonループの演算子積展開についてスカラー、フェルミオンとその束縛状態の寄与が具体的に計算され、ゲージ重力対応との比較ができる有効な方法であることが判明した。着実に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
N=4超対称Yang-Mills理論における光円錐ベクトルからなる多角形を境界とするWilsonループの期待値はグルーオン散乱振幅と 等価であり、場の理論における基礎的物理量である。強結合領域における任意の光円錐多角形Wilsonループはより基本的な5角 形Wilsonループに分割され、その演算子積展開を評価することにより強結合極限からの補正が計算できる。その評価には5角形W ilsonループ間のフラックスチューブの動力学を理解することが重要である。今年度も引き続きそのフラックスチューブの励起 状態の理解とそのWilsonループへの寄与の計算をさらに進める。その計算は、N=2超対称ゲージ理論におけるオメガ背景場の下 で変形されたNekrasov分配関数の公式との類似性が研究分担者の研究から明らかになっており、それによりWilsonループの量子 補正の可積分構造を解明する。今年度は強結合領域からの補正に重要なフェルミオン、反フェルミオン、メソンの寄与を前年度 に引き続き理解する。またWilsonループに対するnon-planar補正をWilsonループの演算子積展開から評価する事を試みる。さらに前年度考察した円錐的な特異性を生み出す演算子のモノドロミーに対応する構造因子の研究も推進し、Wilsonループの可積分構造について新しい知見を得る。
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