2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16F16754
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 忍 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90201053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHEN SHUNHUA 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 数値解析 / 積層ガラス / 衝突破壊シミュレーション / き裂進展アルゴリズム / Cohesiveモデル / 接触アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、有限要素法による自動車フロントガラス(積層ガラス)の衝突破壊シミュレーションを行うために、高精度で高効率なextrinsic cohesiveモデルの一種であるき裂進展モデルの開発を行ってきた。既存のき裂進展モデルであるintrinsic cohesiveモデルはすべての要素に対して cohesive領域を定義する手法であり、計算効率に問題があったが、申請者らが開発したモデルは解析中にアダプティブに cohesive領域を作成することで高効率かつ高精度なシミュレーションを可能にしている。 平成28年度は、まず、自動車積層ガラスの衝突破壊シミュレーションに関して、広範囲にわたる調査研究を行った。ガラスのき裂進展シミュレーションに関しては、これまで6種類のき裂進展アルゴリズムが提案され、広く用いられている。また、ガラスを接着する樹脂であるポリビニルブチラール (PVB)の変形に対しては、超弾性体や粘弾性体などを含む様々なモデルが用いられており、ガラスとPVBとの粘着に関しては、主に3種類の手法が提案されている。申請者らは、シミュレーションの結果得られたき裂進展パターンと加速度の時刻歴を基に、上述の6種類のき裂進展アルゴリズムの精度に関する調査研究を実施した。 また、申請者らが提案を行ってきたモデルの実装に先立って、衝突解析の商用コードである LS-DYNA を用いたintrinsic cohesiveモデルによる自動車積層ガラスの衝突破壊のシミュレーションも行った。その結果、前処理段階でのcohesive領域の作成は、要素数に比例することを示した。LS-DYNA を用いた実問題の解析を行い、定性的に妥当なき裂パターンが生成されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは自動車積層ガラスの衝突破壊シミュレーションに関する包括的なレビューを行い、複合材料の分野でインパクトの高い論文誌であるComposites Part B: Engineering にレビュー論文を投稿し、掲載された。次に、申請者らが提案した extrinsic cohesiveモデルに属する高精度・高効率なモデルの比較対象とするため、衝突解析の商用コードであるLS-DYNAを用いて従来手法である intrinsic cohesive モデルによる衝突破壊解析を実施した。intrinsic cohesiveモデルは前処理段階において全要素間に cohesive領域を生成するが、申請者らはこの処理を高速に行うアルゴリズムを開発した。また、数値実験によって開発したアルゴリズムが cohesive領域の生成に要する時間は要素数に比例することを示した。LS-DYNAを用いて実問題の解析を行った結果、定性的に妥当なき裂パターンを再現することに成功した。 一方、近年では実装が非常に容易であるため、き裂が発生した部分の要素を削除する手法である element deletion法が広く用いられている。しかしながらこの手法は、精度の面で問題があると考えられている。この手法の有効性や適用限界を検証するため、申請者らは現在、intrinsic cohesive モデルとelement deletion法との比較検討も実施している。 以上より、当初予定していたき裂部分の接触による相互作用を解析するための接触アルゴリズム開発に一部の遅れがみられるものの、精度の面で重要となるき裂進展アルゴリズムの検討および開発が進み、全体として、研究は順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はまず、現在進めている element deletion 法と intrinsic cohesion モデルとの比較を行うための数値実験を行い、精度と効率の両観点から考察し論文にまとめる予定である。LS-DYNA は、申請者らが開発したextrinsic cohesiveモデルを追加実装することが困難なため、extrinsic cohesiveモデルに基づく大規模衝突破壊解析コードの実装を行う。また、cohesive領域を用いたモデルは解析結果がメッシュに依存するため、現在用いている六面体要素に比べて複雑形状の表現がより柔軟に行える三角柱要素の実装を行い、開発コードへ組み込む予定である。また、メッシュ依存の問題に対して根本的な解決を図るために、節点の移動を含むメッシュ制御アルゴリズムの開発を行い、数値実験を行って精度および妥当性の検証を行う予定である。 これらに加えて、き裂部分の接触による相互作用を解析するために、ロバストで効率的な接触アルゴリズムの開発を継続して行う。このとき、頂点-頂点、頂点-エッジ、頂点-面、エッジ-エッジ、エッジ-面、面-面の6種類の考慮すべき接触パターンが存在する。特に面-面タイプの接触の際に、segment-based mortar積分法を用いて接触力の不連続性を除去することにより、高精度な解析が可能となると考えられる。また、多くの接触タイプを考慮しながらも接触力の連続性を担保するための新たな手法開発も行う予定である。
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