2017 Fiscal Year Annual Research Report
リモートセンシング手法に基づく山岳地帯の高精度な蒸発散推定モデルの開発とその適用
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16F16766
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
王 勤学 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主席研究員 (50353545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AI ZHIPIN 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 蒸発散 / 複雑な地形 / 渦相関法 / 山地森林生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複雑な地形に適した蒸発散モデルの精緻化と検証及び影響評価を目的としている。そのため、まず、中国科学院農業資源研究センターと共同で、太行山山地生態系実験場で観測した蒸発散データおよび南北斜面において観測している日射量、気温、湿度、降水量および土壌水分量、熱フラックスとなどの3年間の気象・水文データを収集した。同時に、日本各地の山地森林生態系に位置する4地点の渦相関法による観測した水分と熱のフラックスデータも収集した。これらのデータに基づいて、地表面の蒸発散モデルによく使われている気温、表面温度、湿度、降水量などいくつかの主要な水文・気象学的なパラメータの変動を解析した。 広域の地表面蒸発散を推定するために、リモートセンシングによる広域蒸発散量の推定法が多く開発されている。Bouchetが提案したlinear complementary relationshipと言う線形型補完関係式はその一つである。しかし、この手法は経験法に基づいたものであったため、Brutsaertが物理過程に基づいて新たな非線形型補完推定式(nonlinear complementary method)を提案した。本研究は、複雑な地形の条件でBrutsaert氏が提案した非線形型推定式の適用可能性を検討するため、日本の北から南への山地森林生態系における4地点で渦相関法による観測データを用いて、この推定式に必要な一つ未知のパラメータ(α)を決定された。決定されたα値はそれぞれ0.94~1.10の範囲にあり、平均値は1.01であることが初めて明らかにした。この研究成果は、「Estimation of land-surface evaporation at four forest sites across Japan with the new nonlinear complementary method」と言う論文として、ネイチャー系の国際誌であるScientific Reports誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、これまで開発した複雑な地形に適した蒸発散モデルの精緻化と検証を行い、標高、傾斜、傾向など地形要因の影響評価を行うことを目的とする。そのため、当初の年度計画では、下記の三つの目標を立てた。即ち、(1)モデルを精緻化するため、気温と地表面温度の関係について検討し、地表面温度から気温の推定方法を開発すること;(2)モデルを検証するため、中国科学院農業資源研究センターと共同で行っている山地生態観測サイトでの観測データを収集すること;(3)既存のモデルを比較することで、モデルの特徴および空間的な再現性について評価することであった。 これらの設定目標を予定通り達成した後に、さらに日本各地の山地森林地帯の4地点で渦相関法による観測した蒸発散データも収集し、モデルを検証した。その研究成果は、下記の論文をまとめ、ネイチャー系の国際誌であるScientific Reports誌に掲載された。 Ai, Z., Wang Q-X., Yang Y., Manevski, K., Zhao, X., Eerdeni (2017) Estimation of land-surface evaporation at four forest sites across Japan with the new nonlinear complementary method. Scientific Reports, 7 (17793)
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、これまで検証した蒸発散モデルをより広い地域に適用されるため、まず、地上観測データと衛星観測データを収集し、データベースを作成する。さらに、検証されたモデルを複雑な地形条件を持つ集水域に適用し、異なる土地利用類型毎の蒸発散量の相違を推定し、土地利用による影響評価を行う。関連の研究成果を「第15回アジア・オセアニア地球科学会」で発表する予定である。
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