2017 Fiscal Year Annual Research Report
有機バイオサイドと銅による相乗的な毒性作用メカニズムの理解
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16F16773
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡村 秀雄 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (90253020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LAVTIZAR VESNA 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 防汚剤 / ピリチオン / トラロピリル / 生態毒性 / ウニ受精試験 / ウニ初期発生試験 / カキ初期発生試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
防汚剤であるトラロピリル(TLP)およびTLPの分解産物、ジンクピリチオン(ZnPT)、銅を供試し、イワガキおよびウニの胚の初期発生に対する影響を評価した。夏、秋、冬に成熟したウニ(それぞれタコノマクラ、アカウニ、バフンウニ)を供試して、精子を1時間暴露した後に受精させる試験(受精試験)、受精卵を48から72時間暴露する試験(初期発生試験)を行った。受精試験では受精率を、初期発生試験では発生の遅れ、形態異常個体、プルテウスの成長を指標として評価した。受精率に対する影響は、初期発生に対する影響に比べて感受性が低かった。3種類の防汚剤は、単独でいずれも有意な影響を示し、例えば、TLP(1~100 ug/l)は25 ug/l以上では発生が極端に遅れ、異なる発生段階の胚が観察され、正常なプルテウス幼生は認められなかった。一方、TLPの分解産物(100 ug/l)は、ウニの精子に対しても初期発生に対しても有意な影響を示さなかった。供試した3種類のウニに対する毒性試験結果には顕著な差はなかった。 タコノマクラの初期発生に影響しない銅の濃度(5ug/l)を供試し、TLP(1.6~100 ug/l)と銅を混合した場合、およびZnPT(0.1~30 ug/l)と銅を混合した場合の毒性影響を評価した。銅はTLPの有害性に顕著な影響を及ぼさなかったが、ZnPTの有害性を顕著に増大させた。この現象は、銅とZnPTから生成した銅ピリチオンがより強い有害性を示したと考えられた。 毒性試験の結果を実測濃度で解析するために、TLPおよび分解産物の濃度を蛍光検出器を装着したLCを用いて定量する方法を開発し、加水分解曲線を作成した。このモデルを元にして、短時間で加水分解するTLPの濃度を推定し、毒性試験から得られる影響濃度を算出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウニを用いた試験法を導入して、公的試験法に準じた試験法をほぼ完成させた。一方、カキを用いた試験では受精率が極端に低く、試験法を確立できなかった。ウニ試験は簡便で感受性が高いので、この試験を用いて有機防汚剤と銅の相互作用を評価し、設定濃度を元に毒性試験結果を評価できた。毒性試験の結果は、防汚剤の(あるいは活性物質の)実測濃度を元に解析することが一般的であるが、TLPは極めて迅速に加水分解することと、親化合物の分解量と分解産物の生成量が化学量論的に合わなかった。この分析技術上の困難さから、本年度に予定していた水中での安定性評価(加水分解性、光分解性)の解析は次年度に行うこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は以下の通り、研究成果をまとめる。 1)TLPの安定性評価: 加水分解性、近紫外光に対する分解性を評価する。 2)TLPの生態毒性評価: 微細藻類、棘皮動物、二枚貝に加えて、甲殻類アルテミア、海藻類シオミドロに対する影響を評価し、種の感受性分布を明らかにする。 3)TLPおよびZnPTと銅との相互作用: 生態毒性試験を用いて、有機防汚剤に対する銅の相互作用メカニズムを理解する。
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