2016 Fiscal Year Annual Research Report
都市近郊における諸資本の代替が人間の福利の持続性に及ぼす影響の評価
Project/Area Number |
16F16791
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 禅 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20462492)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BASU MRITTIKA 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
|
Keywords | 自然資本 / 代替 / 生態系サービス / 人間の福利 / 関係価値 / 都市化 / 都市近郊地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、人間の福利や主観的幸福度(以下、人間の福利)の評価を行った先行研究をレビューし、本研究で採用する研究枠組みや分析方法について検討した。本研究では、インドで急激な都市化を経つつあるカルカッタの郊外部を対象とすることから、様々な資本のうち特に自然資本のかい廃が、この地域に暮らす人々の福利に及ぼす影響について焦点をあてることとした。このため初年度は研究対象地をカバーするLANDSAT衛星画像を、1996年から2016年まで10年刻みで3時点分収集し、都市域の拡大方向や土地利用変化を分析した。 また、2017年1月下旬から2月中旬にかけて、今後の本格調査のための予備的なフィールドワークを実施した。ここでは衛星画像解析を行った地域を視察し、開発による地域住民の生活の変化を観察し、今後の詳細調査の候補地を選定した。また、本地域で都市開発を所管する西ベンガル住宅都市開発公社を訪問し、担当職員との会合を行ない、研究の趣旨説明や今後の調査への協力を求めた。この地域の都市開発は政府による大規模な土地収用や用地補償の問題があり、公社は調査への協力について消極的であった。数次の打ち合わせを経て、本地域の開発に関わる計画文書やその他行政資料、統計データを入手した。ただし、入手できなかったデータも存在するため、今後より高分解能の衛星画像や生態系サービスの評価モデルを用いた解析を進めることで、この問題について対処する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が対象とする、自然資本と人間の福利の関係は、これまで国レベルや地域レベルで統計等を用いた解析しか行われておらず、詳細な事例調査はほとんど行われてこなかった。また、限られた先行研究も生態系サービスと人間の福利の関係に焦点をあてており、生態系サービスの産出基盤である自然資本の損失が人間の福利に与える影響は十分に研究されていない。このため初年度は、研究の方法論を確固たるものにするべく、精力的な文献調査を行った。また、研究対象地でのフィールドワークの際に、開発を所管する公社を訪問し、研究への協力を要請した。この地域の都市開発は政府による大規模な土地収用や用地補償の問題があり、公社は調査への協力について消極的であった。入手できなかったデータも存在するが、上記の通り高分解能の衛星画像や数理モデルを組み合わせて用いることで、これら問題は克服できる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した先行研究のレビューにもとづき、現在、急激に都市化が進みつつあるインド都市郊外部において、自然資本の損失が居住者の福利に与える影響の解析を進めつつある。文献調査や現地調査で収集した情報を踏まえ、自然資本の損失と生態系サービス、人間の福利との関係を分析するためのアンケート調査票の作成を進めている。人間の福利については、先行研究では十分に把握されてこなかった、地域愛着や社会的紐帯、精神衛生を含めることとした。今年度、本調査票を持参し、カルカッタ郊外のニュータウンであるラジャハットで本格的な現地調査を行う予定である。調査対象は300~400世帯を想定している。また、自然資本の損失やそれによる生態系サービスの変動については、高分解能の衛星画像を入手し、詳細な解析を行なう。これら結果を取りまとめて、任期中に国際学術誌に研究論文の投稿を目指す。
|