2016 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamics of transcendental and rational functions
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16F16807
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宍倉 光広 京都大学, 理学研究科, 教授 (70192606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MARTI-PETE DAVID 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 力学系 / 超越関数 / ジュリア集合 / フラクタル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、Arnold familyと呼ばれる超越整関数の族を中心に研究を行った。Arnold familyは、 z-> z + α + β sin(2πz) (mod 1)(ここで α, β はパラメータ)で定義され、指数関数 exp(2πi) を通して穴あき平面 C* の上の写像と半共役になる関数族である。この族については、実相空間や実パラメータについては数多くの研究があるが、それを複素相空間、複素パラメータに関して調べて研究はまだ少ない。まず、様々な分岐現象を追跡できるソフトウェアを開発し、各種の非線型性の度合いに応じてその分岐集合をその細部の拡大も含めて描画し、その形状や変化を観察した。 まず、相空間では、無限遠(虚部の大きな部分)でのHair状不変集合の存在を確認し、それが実際に連続曲線として実現されるという予想を立てた。また、この方針について、N. Fagella氏の先行研究があることも発見し、それを含む形で、一般的なHairの存在定理を示すための研究中である。また、可能であれば、各Hairについて、指数関数の場合と同様に微分可能性を示せる可能性があることを確認した。厳密な定式化と証明は次年度の課題である。 次にパラメータ空間においては、実パラメータの近くの衛星型双曲成分について研究した。実パラメータのときには、移動パラメータ α に応じて実軸上に生ずる吸引的周期点が複素パラメータについても継続して存在し、それが吸引的であり続けるパラメー領域があることがわかり、その概形は、特異点を一つ削除して得られる「half Arnold family」のパラメータ空間に現れる衛星型双曲成分に非常に似ていることがわかり、その命題を数学的に定式化することができた。さらに、この衛星型双曲成分の中には、指状の分岐領域が存在することが数値実験により確認された。これを説明する仮想特異点の概念を考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Arnold familyは実相空間や実パラメータについては数多くの研究があるが、それを複素相空間、複素パラメータに関して調べて研究はまだ世界的にも少ない。今年度は、これについて詳しく調べることができた。現状は、まだ、相空間や、パラメータ空間の分岐集合を様々に描画して、モデルを作ったり、予想を立てている段階であるが、次年度に具体的な予想の確立と証明に手をつけられる段階まで来た。 Bishopによる擬等角折り込みの方法についての研究は、時間の制約のため、まだ進展していないが、次年度は彼の論文に関するセミナーを行い、新しい研究を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Arnold familyについては、Hairや指状分岐集合について、いろいろなモデルや予想が得られたので、それを厳密に定式化し、証明をしていく。特に、Hairを用いた相空間のパズル分割やパラメータ空間のパラパズル分割を調べていく。 また、擬等角折り込みの方法については、擬等角手術と組み合わせることによって、どのようなことができるかについて考察する。 さらに、エルマン環の個数や配置の問題についても、擬等角手術の方法を用いて研究する。
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