2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16GS0312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河野 憲二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40134530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 健一郎 京都大学, 医学研究科, 研究員(科学技術振興) (20362535)
田端 宏充 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 運動制御 / 脳 / 視覚 / 文脈 / 時系列 / 眼球運動 / 情報処理 / サル |
Research Abstract |
本研究は、動物の持つ柔軟な運動制御のための情報処理機構を、視覚的眼球運動を対象として明らかにしようとするものである。ヒトはいま自分が置かれている状況から次に起こることを予測して、次に起こすべき運動を準備している。このような行動の予測的制御を調べるため、本年度はヒト及びサルを対象とした行動学的実験により、今後の研究の基盤となる実験課題を確立した。 スクリーン上に小さなスポット(視標)を投影し、短期間小さく動かし(視標の揺れ:100ミリ秒=±10度/秒、10Hzの正弦波状の動きの一周期)、その動きによって起こる眼球運動を計測した。この視標の揺れによっておこる眼球運動は、視覚刺激から眼球運動への感覚-運動情報変換のゲインを反映していると考えられる。まず、ヒトを対象とし、被験者が動く視標を絶えず追跡している場合と、常に動かない視標を固視している場合とで比較すると、被験者が動く視標を絶えず追跡している場合には、視標の揺れによって比較的大きな眼球運動が誘発されたが、常に動かない視標を固視している場合には、同じ視標の揺れでも眼はあまり動かなかった。そこで、追跡眼球運動を行わねばならない場合と、固視を行わねばならない場合が時系列的に繰り返し変化する実験課題を作り、眼球運動を計測したところ、直前に追跡眼球運動を経験した場合は大きな眼球運動が誘発され、固視を行っていた場合は誘発される眼球運動が小さくなることが明らかになった。この結果は、ヒトは自らの直前の行動を参照しながら追跡眼球運動準備のためのゲイン調整をしていることを示している。また、そのために実施している計算は工学的に最適な時系列計算アルゴリズムとほぼ同一であることを理論的に示すことができた。さらに同じ課題をサルに訓練し、サルでもヒトと同様の眼球運動反応を観察し、次年度からの電気生理学的実験に展開できることを確認した。
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