2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16GS0312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河野 憲二 Kyoto University, 医学研究科, 教授 (40134530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 健一郎 京都大学, 医学研究科, 科学技術振興助教 (20362535)
田端 宏充 京都大学, 医学研究科, 助教 (20402844)
小川 正 京都大学, 医学研究科, 講師 (50311197)
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Keywords | 運動制御 / 情報処理 / 脳 / 視覚 / フーリエ変換 / ヒト / 眼球運動 / 時空間フィルター |
Research Abstract |
これまでの研究で、視覚的運動制御の解明には、初期視覚系の性質のより深い理解が必要であることが示されてきた。そこで、追跡眼球運動制御のための視覚-運動情報変換過程において、視覚刺激から動きの情報が抽出されるメカニズムの解明に注目して研究を進めてきている。 矩形波からその基本周波数成分を差し引いた波(Missing Fundamental, MF縞)の仮現運動刺激を用いて、サルの追従眼球運動に用いられている視覚情報処理について調べた。MF縞とは振幅が1/3,1/5,…と減少していく奇数調波(3f,5f,…)から構成される波である。この波を基本周期の1/4波長ずつ移動させると、刺激の動く方向とは反対の方向、即ち3f要素の動く方向に追従眼球運動が起る。この視覚刺激を用いて、単一ニューロン記録を行ったところ、MT野、MST野のニューロンが3f要素の動く方向に反応することが明らかになった。この結果は視覚刺激から運動を検出する機構が、視覚刺激をフーリエ変換して、その最大振幅をもつ調波によってドライブされる、時空間視覚フィルター的性質を持ち、MT野、MST野より前の段階の視覚野においてこの時空間視覚フィルターが働いていることを示している。 また、この現象は、追従眼球運動は視覚刺激を構成するそれぞれの正弦波刺激によって起こる眼球運動のベクトル加算の結果として発現しているのではなく、視覚刺激のうちの優位な正弦波状縞の動きによって発現していることを示しているが、本年度は、左右の眼に視差を与えることによって起こる輻輳開散運動でもこの現象が観察されることを確認した。これは、脳が複数の事象を処理するときの戦略として知られるWinner-Take-All現象(勝者ひとり勝ち現象)が輻輳開散運動の制御過程でも起きていることを示している。
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