2016 Fiscal Year Annual Research Report
犬のリンパ球クローナリティ検査におけるピットフォールの探索
Project/Area Number |
16H00481
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Research Institution | 那須野ヶ原アニマルクリニック |
Principal Investigator |
鷹栖 雅峰 那須野ヶ原アニマルクリニック, 獣医師
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | リンパ球クローナリティ検査 / 胸腺腫 / 皮膚形質細胞腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
犬のクローナリティ検査は、リンパ球の免疫グロブリン重鎖遺伝子およびT細胞受容体遺伝子を利用して、リンパ球のクローン性を検出する方法である。この検査はリンパ腫のようなリンパ球増殖性疾患の診断に有効で、臨床例に広く利用されるようになっている。本研究ではリンパ球浸潤が認められるリンパ球増殖性疾患以外の疾患(胸腺腫、皮膚組織球腫、多形紅斑、正常な十二指腸、脾臓結節性過形成)においてリンパ球クローナリティ検査を行い、ピットフォールを探索した。またB細胞由来である形質細胞腫でのクローナリティ検査の感度が調査されていないことから、本研究では犬の皮膚形質細胞腫での感度も調査した。 それぞれ30例ずつの症例を用いた。ホルマリン固定パラフィン包埋切片からゲノムを抽出し、リンパ球クローナリティ検査を行った。クローナリティ検査はガイドラインに基いて実施した。 胸腺腫においては、30例中5例にT細胞クローナリティを認めた(16.7%)。皮膚組織球腫では30例中13例にT細胞クローナリティを認めた(43.3%)。多形紅斑および正常十二指腸では、それぞれ30例全てがクローナリティは認められなかった。脾臓の結節性過形成では、30例全てにおいてクローナリティは認められなかった。皮膚形質細胞腫におけるクローナリティ検査では、B細胞クローナリティは30例中11例に検出された(36.7%)。 胸腺腫および皮膚組織球腫はリンパ球増殖性疾患では無いにも関わらず、T細胞クローナリティを示す症例が認められた。この原因は明らかにされていないが、腫瘍に応答するT細胞によると推測される。多形紅斑と正常な十二指腸ではボリクローナル反応が認められるため、多様なリンパ球が浸潤していることが示唆された。形質細胞腫はB細胞に由来するため、B細胞リンパ腫と同等の感度が得られると予想されたが、感度は36.7%であり、B細胞リンパ腫の感度に比べて著しく低いことが明らかになった。配列分析によりプライマーのアニーリング領域の変異が確認されたことから、検出感度の低下は体細胞超変異によることが示唆された。
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