2016 Fiscal Year Annual Research Report
代謝酵素阻害作用を有する抗HIV薬とステロイド剤との薬物相互作用に関する臨床研究
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16H00549
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
嶺 豊春 長崎大学, 病院, 技術職員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 抗HIV薬 / ステロイド副作用 / 薬物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV感染症における抗HIV薬を用いた多剤併用療法では、抗HIV薬の血中濃度を高め長く持続させるために薬物動態学的増強因子(ブースター)と呼ばれるCYP阻害作用を有する薬剤を少量併用する方法が利用されている。ブースターの利用により併用抗HIV薬の消失半減期が延長し1日1回の内服が可能となる。以前よりブースターとCYPで代謝される薬剤を併用した際の薬物相互作用が指摘されてきた。臨床例としては、リトナビルと吸入ステロイド薬フルチカゾンの併用において、医原性クッシング症候群や副腎皮質機能抑制をきたすことが報告されている。ステロイド剤にブースターを併用した場合の、局所性または全身性のステロイド副作用リスクに関する国内の調査研究はほとんどないことから本研究を着想するに至った。 平成22年から平成28年にかけて抗HIV薬とステロイド剤を併用した患者を対象に、全身性のステロイド副作用の発生状況、抗HIV薬の種類・用量、ステロイド剤の種類・用量と発生状況との関連性を指標として後方視的に電子カルテ情報を用いた調査検討を行った。 調査期間内に、CYP阻害作用のない抗HIV薬とステロイド剤を併用した群が7例、CYP阻害作用のある抗HIV薬とステロイド剤を併用した群が15例、抽出された。ブースターにリトナビルを使用した群は7例、コビシスタットを使用した群は8例であった。併用期間は最長約660日に及ぶ例が確認された。ステロイド併用群の剤形は、吸入剤、点鼻剤であった。いずれの併用群においても調査期間中、クッシング症候群・クッシング様症状(血中コルチゾール濃度の異常、眼障害等)の発生、骨粗鬆症薬・血糖降下薬等の新たな追加を来した症例は確認されなかった。引続き評価対象となるCYP3A4阻害作用を有する薬剤およびステロイド併用群の剤形について組合せの範囲を追加すると共に、再度同内容の検討を行う予定である。
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