2016 Fiscal Year Annual Research Report
知識表現付き高精度3次元地図を用いた自律協調型自動運転システムに関する研究
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16H01712
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 真平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70631894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 剛 長崎大学, 先端計算研究センター, 准教授 (00443010) [Withdrawn]
佐々木 洋子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00574013)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報システム / 高度道路情報システム(ITS) / 超高速情報処理 / ハイパフォーマンス・コンピューティング / 知能ロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
【高精度3次元地図に関する研究】高精度3次元地図とは、3次元LIDAR(レーザースキャナ)とカメラで取得した実世界情報をデータ化し、実世界の形状を点群(ポイントクラウド)で、道路情報を線分(ベクター)で表現した地図データを指す。作成した高精度3次元地図は位置推定や物体検出に活用する。東大チームはNDT(Normal Distributions Transform)を用いた3次元位置推定の自動運転応用で実績があり、オープンソースの自動運転ソフトウェアであるAutowareにも組み込んである。本研究では、Graph SLAMという手法を用いて、NDTを用いた3次元地図生成を考案し、生成のみならず既存地図の更新まで実現した。この地図更新の精度検証を行った結果、2~3kmの範囲であれば3次元LIDARのみを用いて3次元地図を生成、更新できることがわかった。 産総研チームも同様の課題に取り組んだ。3次元LIDARによる地図作成手法では、自車位置推定の積分誤差により、走行距離が長くなるにつれて地図形状の誤差が拡大することが課題であったため、歪みの残る3次元地図に対し、国土地理院発行の基盤地図情報を使用し、ポーズグラフを用いて最適化することで、3次元地図の自動生成を実現した。 【GPUを用いた高速データベースに関する研究】現在、多くの自動運転システムでは、地図や移動体データを車載システムに格納している。しかしながら、実際には他車や歩行者と共有することになるため、これらのデータはクラウド上のサーバシステムで管理されるべきである。本研究では、VoltDBというインメモリデータベースを利用し、従来のSQLサーバと比べると100倍以上の高速化が可能なデータベースを実現した。また、車載システム側にも同様のデータベースを導入し、車載システムとサーバーシステムのシームレースなデータ通信にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階で計画していたH28年度の目標は(1)3次元地図更新技術の構築、(2)3次元地図への知識表現の追加、(3)階層型データベースとGPU応用であった。(1)については想定以上の進展があり、ベンチャー企業との共同サービス提供にまで発展しつつある。(2)については車や歩行者といった主要な移動体の検出と追跡の結果を3次元地図にマッピングするところまで進んでおり、概ね順調といえる。(3)は車載システムとサーバーシステムの双方でGPUを用いたデータベース導入を進めた。車載システムは一部次年度に持ち越しているが、サーバーシステムに関しては優良な研究成果が得られ、2本の国際ジャーナル誌論文としてまとめることができた(1本は投稿中)。 これらの研究成果以外にも、本研究チームは研究成果を積極的にオープンソース公開し、第3者の研究者、開発者にも利用可能な完成度に至っている。以上をまとめると、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は主にオープンソースの自動運転ソフトウェアであるAutowareをベースとした基礎システムの開発に従事し、提案技術のプロトタイプ実装や精度評価に重点を置いた。これは申請段階の計画通りである。次年度以降は、この基礎システム上で応用研究を進めていく。3次元地図用の知識表現に関する研究は継続的に実施し、その他の項目については以下の計画で技術課題を拡張していく。 【高精度3次元地図更新のオンライン化】今年度に方法論を固めた地図更新については、次年度以降では複数車両からのセンサ情報を用いた広域の地図更新を実施していく。センサ情報はサーバー上の移動体データベースに格納して共有するため、時々刻々と集まってくるセンサ情報をサーバー側で統合して、地図更新をオンライン化する必要がある。本研究ではすべてのデータソースは信頼できるものと仮定し、各車両からのセンサ情報の精度誤差に起因する地図補正を技術課題に設定する。この際、Graph SLAMは巨大な連立方程式を解く問題に帰着する。研究代表者の加藤はこのような巨大な連立方程式をGPUによる並列処理で高速化する技術を有しているため、今年度開発を行ったGPUを用いた車載システムやサーバーシステム上にそのようなGraph SLAM機能を構築する。【データベースの分散化】現在の実験では高々10件程度の移動体(自車、他車、歩行者)しか存在しないが、実環境での移動体の数は10~100万件に至る。単一のサーバではハイスペックなCPU、GPUを用いたとしてもミリ秒単位で処理できるのは数万件、仮に100万件を超えるデータに対して検索・結合を実行すると10秒以上要することがわかっている。本研究では複数のサーバにより移動体データベースを分散化する手法を提案していく。
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Remarks |
世界初の自動運転オープンソースソフトウェア「Autoware」の機能開発の一部に科研費を利用しています。
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