2017 Fiscal Year Annual Research Report
知識表現付き高精度3次元地図を用いた自律協調型自動運転システムに関する研究
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16H01712
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 真平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70631894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 洋子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (00574013)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報システム / 高度道路情報システム(ITS) / 超高速情報処理 / ハイパフォーマンス・コンピューティング / 知能ロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
【高精度3次元地図更新のオンライン化】クラウドに集まる複数車両からのセンサ情報を用いた広域の地図更新に関する研究を進めた。クラウドにはMicrosoft Azureを利用した。本研究ではすべてのデータソースは信頼できるものと仮定し、3次元のGraph SLAMを流用したオンラインでの持続的な地図補正に取り組んだ。また、オンライン更新をリアルタイムに行うためにGPGPUを用いた3次元処理の並列化を行い、10倍以上の性能向上を実現した。本研究内容は次年度も継続する予定である。 【階層型データベースの分散化】実環境での移動体の数は10~100万件に至る車両情報を管理すべく、クラウド上の複数のサーバから構成される分散型の移動体データベースに関する研究を進めた。具体的には、インメモリデータベースであるVoltDBをGPGPU向けに拡張し、従来はメインメモリに展開していたデータテーブルをGPUのデバイスメモリに格納できるようにした。このことにより、一定時間の間に処理できる件数が100倍以上になった。次年度はこれをさらに複数のサーバ上のGPUにも分散できるシステム技術を研究する。 【車載GPUおよびメニーコアによる並列処理のリアルタイム化】自動運転システムでGPUやメニーコアを使用する場合やシステム全体で制御フローおよびデータフローを持つ構造になる場合は、リアルタイム性を保証するために特殊なスケジューリング理論が必要になる。本研究ではリアルタイムスケジューリングにおけるDirect Acyclic Graph(DAG)の適用に着目し、自動運転システムをひとつのDAGとして扱うことのできる基本ソフトウェアの研究を進めた。DAGの特性を活かした時間解析を適用することで、各タスクの遅れ具合からシステム全体の遅れを見積もることができるアルゴリズムを考案し、その正確さを評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階で計画していたH29年度の目標は(1)高精度3次元地図更新のオンライン化、(2)階層型データベースの分散化、(3)車載GPUおよびメニーコアによる並列処理のリアルタイム化、であった。 (1)については実際の商用クラウド上にサービスとして公開するところまで進展した。また、関連する論文発表も行った。 (2)については分散化までには至っていないところが次年度にかかる課題であるが、単一ノード内でCPUとGPUで階層型データベースを構築するところまでは進展している。 (3)については理論研究を中心に進め、論文発表も複数行った。一方、理論成果を実際のオープンソースソフトウェアに実装し、第3者の研究者、開発者にも利用可能な状況までもっていった。 以上をまとめると、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に基礎システムに関する研究を行い、今年度はそれを応用した3つの研究課題に取り組んだ。最終年度も継続してこの3つの研究課題に取り組み、最終成果としてはオープンソースの自動運転ソフトウェアであるAutowareに組み込み、普及を目指す。また、地図更新やデータベース技術についてもクラウドのサービスとして実装し、一般にサービス公開していく。特に地図更新に関する研究については、階層型データベースの研究課題とも統合し、これまでの研究成果をクラウド上の複数コンピュータに分散させる仕組みを構築し、広域の大規模地図生成をオンラインサービス化できるレベルにまでもっていく。すなわち、これからの自動運転システムがインターネットに接続されることを前提としたクラウド基盤の確立を目指す。車載GPUおよびメニーコアによる並列処理のリアルタイム化については、各タスクの遅れ時間を見積もれるところまでできているため、最終年度はそれを自動運転システムには欠かせないものとなるフェールセーフ機能として実装する。絶対に安全な自動運転システムを構築することは不可能であるため、我々は安全が阻害された際に速やかに正常状態に戻る、あるいは安全な状態に遷移できる自動運転システムの構築を目指す。特に「安全な状態に遷移」という観点では知識表現付きの3次元地図の有効性が高く、車載システムが自分で判断できない部分をクラウド上に分散させてある3次元地図情報から得ることで、例えば安全な場所まで低速走行して停止するという処理を行うことができるようになる。本研究では、こういったいくつかのケーススタディも実際の実験車両を用いて評価していく計画である。
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