2016 Fiscal Year Annual Research Report
強化学習理論に基づく問題解決のモデル化と創造的問題解決の認知機序の解明
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16H01725
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 一博 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60262101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鮫島 和行 玉川大学, 付置研究所, 教授 (30395131)
福田 玄明 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (40615100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 認知科学 / 実験系心理学 / 学習心理学 / 脳・神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
強化学習の計算理論における重要なパラメータとして,学習の速さを決定する学習率αと,「既得情報の利用と新規情報の探索」のバランス,すなわち情報探索傾向を決定する逆温度βとがある.この2つのパラメータ,特に後者の情報探索傾向によって特徴付けられる認知機構は,強化学習そのものや意思決定のみならず,問題解決の説明原理にもなり得るという仮説の検証を,創造性課題を対象にして行った. 創造性課題について上記の仮説を検証するために,日常で使用するもの(具体的にはペットボトル)に関して普段は行わない使い方を制限時間(3分)内にできるだけたくさん書き出す課題であるUnusual Uses Test(UUT課題; Guilford, 1967)を参加者に課し,各個人が出したアイデアのうち,他の参加者が出しにくいアイデアの割合(uniquenessの高さ)を個人ごとに計算し,それを各人の創造性の指標とした.また,Behrens et al. (2008) にしたがい,ギャンブル課題での選択を強化学習モデルにフィットすることで,各参加者のリスク態度および情報探索傾向を推定した.そして,創造性の指標とリスク態度および情報探索傾向との間に相関が見られるかどうかを検討した.11名の大学生・大学院生が実験に参加した.その結果,創造性の指標とリスク態度には相関が見られなかった一方で,創造性の指標と情報探索傾向との間には正の相関が見られた.このことは,情報探索傾向の高い参加者ほど創造性が高いということを示唆しており,試行錯誤に基づく学習にかかわる認知機構が創造性のベースにある可能性が考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた実験は実施できたものの,実験参加者が思うように集められず,結果の信頼性の点で問題があるため,上記の通り判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
強化学習の計算理論における重要なパラメータとして,学習の速さを決定する学習率αと「既得情報の利用と新規情報の探索」のバランスを決定する逆温度βがある.この2つのパラメータによって特徴付けられる認知機構は,強化学習そのものや意思決定のみならず,問題解決の説明原理にもなり得るという仮説を,創造的問題解決,洞察問題解決,通常の問題解決のそれぞれに対して検証する. 具体的には,実験参加者に各課題を解いてもらい,それぞれのパフォーマンスを示す指標(通常の問題解決では正答率と正答時間,洞察問題解決では正答率,正答時間,制約緩和率,創造的問題解決ではuniquenessの視点や,第三者評定に基づく独創性や有用性などの得点)を個人ごとに抽出する.また,Behrens et al. (2008)などで用いられている山賊問題(bandit task)も実施してもらい,学習率αと逆温度βを個人ごとに推定する.そして,問題解決のパフォーマンスを示す各指標と学習率αおよび逆温度βとの間に相関(βの場合には逆相関)があるかどうかを検討する(心理実験). 仮説通り,問題解決者および問題解決のタイプによって問題解決パフォーマンスと逆温度βとの間に関係が見いだされた場合,当該の問題解決には右前頭極が関与している可能性が考えられる.そこで,右前頭極の活動を経頭蓋電気刺激によりコントロールすることで,新規情報探索傾向およびこれらの問題解決のパフォーマンスが変化するかどうかを検討する(脳計測実験).
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