2018 Fiscal Year Annual Research Report
強化学習理論に基づく問題解決のモデル化と創造的問題解決の認知機序の解明
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16H01725
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 一博 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60262101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鮫島 和行 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (30395131)
福田 玄明 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (40615100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 認知科学 / 実験系心理学 / 学習心理学 / 脳・神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
強化学習の計算理論における重要なパラメータとして、学習の速さを決定する学習率αと「既得情報の利用と新規情報の探索」のバランスを決定する逆温度βがある。この2つのパラメータによって特徴付けられる認知機構は、強化学習そのものや意思決定のみならず、問題解決の説明原理にもなり得るという仮説を、アイデア生成課題や創造的問題解決で検証することが本研究の目的である。 平成30年度に実施した実験には46名に参加してもらい、アイデア生成課題として3種類のUUT課題(Unusual Uses Test)、および学習における学習率αと逆温度βを調べるために山賊問題(bandit task)を実施した。平成29年度に、山賊課題としてBehrens et al. (2008) で用いられている二択課題を用いたところ、学習率αと逆温度βの個人差を十分に検出できなかったため、平成30年度は、Daw et al. (2006) で用いられている四択課題を用い、個人ごとに学習率αと逆温度βを推定した。一方、3種類のUUT課題から創造性や創造的問題解決に関する指標を個人ごとに抽出するはずであったが、それにはUUT課題のアイデアの質的評価を5~10名程度の第三者に依頼する必要がある。まだ2名にしか依頼できていないため、個人ごとの創造性や創造的問題解決に関する指標を抽出できていないのが現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた実験は遂行できたが、当初予定していた分析が完了していない。そのため、上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はまず、昨年度の実験で得られたデータの分析を行なう。具体的には、アイデア生成課題の結果から創造性に関する指標(評定者によるアイデアの主観評定、実験参加者自身のお気に入りのアイデアの得点,fluency,uniquenessなど)を個人ごとに算出する。それには、さらに3~7名程度の第三者にアイデアの質的評定を依頼する必要があり、それを早急に実施する。そして、創造性や創造的問題解決の個人ごとのパフォーマンスを示す各指標と、学習率αおよび逆温度βとの間に相関(βの場合には負の相関)があるかどうかを検討する。さらに、創造的問題解決以外の領域として意思決定課題を取り上げ、同様な検討を行う。具体的には、商品選択課題を実験参加者に実施してもらい、未知商品の選択率と、学習率αおよび逆温度βとの間に相関があるかどうかを検討する。その際に、実験参加者の視線も分析する。創造的問題解決のパフォーマンス、あるいは未知商品の選択率と逆温度βとの間に負の相関が見いだされるというのが本研究の仮説である。 行動実験の結果、上記の仮説が検証された場合、当該の認知課題の遂行には右前頭極が関与している可能性が考えられる。そこで、右前頭極の活動を経頭蓋電気刺激によりコントロールすることで、新規情報探索傾向、および創造性課題のパフォーマンスや未知商品の選択率が変化するかどうかを検討する。
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