2016 Fiscal Year Annual Research Report
ADVISE理論に基づく自由聴取点高精細3次元音空間システムの開発
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16H01736
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 陽一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20143034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
行場 次朗 東北大学, 文学研究科, 教授 (50142899)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
平原 達也 富山県立大学, 工学部, 教授 (80395087)
本多 明生 山梨英和大学, 人間文化学部, 准教授 (80433564)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 聴覚ディスプレイ / マイクロフォンアレイ / 音空間技術 / バーチャルリアリティ / アクティブリスニング / 音空間知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
現実空間とサイバー空間をシームレスにつなぐ空間情報処理技術の核となる自由視聴点型で,環境に応じた精細度とシステム規模をもつ革新的3次元音空間技術を代表者の独創技術ADVISE理論を用いて構築することを目指し,初年度は以下のような実績をあげた。 (1)自由聴取点聴空間情報制御システムの開発:バイノーラル出力型ADVISDE信号処理の実装に必要な,聴取者を取り囲む球(仮想球)から境界内の任意の点までの伝達関数を与える信号処理法を開発した。さらに上記研究の過程で,ADVISEの性能を従来より性能を格段に向上しうるアルゴリズムの可能性が明らかになったため,追加項目としてその検討を進め,高性能化が実際に可能であるとの見通しを得た。 (2)聴取者の動きに対応した高精細3次元聴空間情報取得システムの開発: コンパクト球状マイクロフォンアレイで集音した聴空間情報について,音源の距離を集音後に任意に変更するアルゴリズムの開発を進めた。さらに,球状アレイ2個以上を離して配置することにより特定位置音源の情報を取得する技術開発を行い,実環境において空間分解能やロバスト性の測定,解析を進めた。 (3)聴取者運動時の音空間把握特性の解明:静止音源および移動音源の音像知覚特性を,受動的聴取と能動的聴取条件の下で,心理物理学手法により調べた。併せて,知覚過程モデル化の準備を進めた。また,静止・移動音源用の動的視聴覚ディスプレイシステムと音像方向回答システムを構築して聴取実験を行った。結果,条件によらず,静止音源に対する音像定位正答率は能動聴取条件下のほうが受動聴取条件下よりも有意に高いことを確認した。さらに,音源が頭部前面の近傍を移動し音源位置が壁の近くにある条件では,直線的に移動する音源の音像軌跡は頭部に沿って曲がることと、音源を追従して頭部を能動的に運動させると音像軌跡は音源軌跡と一致することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の3課題,(1)自由聴取点聴空間情報制御システムの開発,(2)聴取者の動きに対応した高精細3次元聴空間情報取得システムの開発,(3)聴取者運動時の音空間把握特性の解明のいずれも,ほぼ予定通り研究が進展した。とくに(3)では当初に見込んだ以上の新知見を得ることができた。 初年度の研究予定を翌年度に繰り越した部分があるが,これは,ADVISEにおける再現音情報の周波数依存性をコンピュータシミュレーションにより評価した結果、従来より性能を格段に向上しうるアルゴリズムの可能性が明らかになったという能動的な理由によるものである。検討の結果,高性能化が実際に可能であるとの見通しが得られており,これは当初計画以上の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度以降の推進方策を研究課題ごとに記述する。 (1)自由聴取点聴空間情報制御システムの開発:初年度に検討したアルゴリズムにより聴取者を取り囲む仮想球から聴取者位置までの音伝搬特性を頭部伝達関数で表現し,バイノーラル信号を生成するバイノーラル聴覚ディスプレイをコンピュータ上で実現する。再現されるバイノーラル信号の精度を人間の音空間知覚手がかりを規範として評価し,最終年度に行うアルゴリズムの高度化の方針を検討する。 (2)聴取者の動きに対応した高精細3次元聴空間情報取得システムの開発:複数の球状マイクロホンアレイを用いたアレイオブアレイズ技術について,初年度に検討した基本アルゴリズムのロバスト性能の検討を行う。その際には,マイクロホンアレイの設置位置,残響,暗騒音といった要素を考慮に入れ,実際に音源から出力される音情報と抽出された音情報との差異を客観的,主観的の両面で分析する。 3)聴取者運動時の音空間把握特性の解明:受動回転運動中の音空間知覚について,聴取者の主観的正面のずれ,精度を指標として分析する。合わせて聴取者の音空間知覚と音像定位との関連に関する検討を開始する。これらの知見を元に,動的聴視空間把握のプロトタイプモデルの構築を進めていく。また,反射がある室内における直線移動音の音像の動きに関する研究を進め、壁の近傍に音源が来ると音像が頭部に沿って曲がる知覚要因の解明を進める。
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Research Products
(11 results)