2017 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト細胞のDNA損傷トレランスの連携制御メカニズムの解析
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16H01775
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
益谷 央豪 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40241252)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA損傷 / ゲノム安定性 / DNAポリメラーゼ・イータ / PCNA / ユビキチン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムDNA上にDNA損傷を残したままDNA複製の阻害を回避する“損傷トレランス”には、損傷乗り越えDNA複製とテンプレートスイッチがあり、PCNAのモノユビキチン化とポリユビキチン化、及び、種々タンパク質間の相互作用による制御があると考えられる。また、PCNAホモ3量体のマルチ修飾により制御される未同定の経路の存在を見出している。以上を踏まえて、損傷トレランスの全体像の理解に資することを目的として、本年度は以下の解析を実施した。 ヒト細胞の損傷乗り越えDNA複製(TLS)機構において中心的な役割を担うDNAポリメラーゼ・イータは3つのPCNA相互作用領域(PIP)を持つ。本年度は、これらの3つのPIPをコンセンサス型に改変したタンパク質を発現誘導できる細胞株を作出した。これらの細胞株を用いることにより、細胞増殖に影響を及ぼす変異体についても、一過性に発現させた変異タンパク質の細胞内で機能解析を可能にした。また、初年度に同定したDNAポリメラーゼ・イータの新規RAD18相互作用領域内のアミノ酸点変異体を作出し、相互作用に重要なアミノ酸を同定した。 テンプレート・スイッチ(TS)機構の活性化のカギとなると考えられているPCNAのポリユビキチン化の分子機構において中心的役割を担うHLTFの活性化に関わるDNA構造とタンパク質間相互作用の解析を実施した。また、その脱ユビキチン化に関わる可能性がある脱ユビキチン化酵素の破壊細胞株を作出した。 未同定の損傷トレランスに関わる可能性がある新規遺伝子の破壊細胞株の作出を実施したが、遺伝子破壊株が致死となる可能性を見出した。そこで、遺伝子発現抑制系に切り替えて、細胞レベルでの機能解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PIPをコンセンサス型に置換した変異体DNAポリメラーゼ・イータの発現誘導細胞株の作出、RAD18との新規相互作用領域中の相互作用に重要なアミノ酸の同定、HLTFタンパク質の機能活性化に関わるDNA構造とタンパク質間相互作用の解析、新規遺伝子破壊細胞株の作出と遺伝子発現抑制系の構築など、前年度に得られた知見をもとに、計画通り、着実に独自の進展をもたらせている。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAポリメラーゼ・イータの3つのPIPをコンセンサス型に変換したものについて解析を進めてきたが、今後は、他のアミノ酸への置換変異体を作出して解析を行うことにより、DNAポリメラーゼ・イータに固有のPIPを介したTLS制御機構の解析に着手する。RAD18との相互作用については、新たに同定したアミノ酸の点変異体を構築し、細胞レベル及び無細胞系における機能解析を実施する。 PCNAのポリユビキチン化については、HLTFの活性化制御機構の解析を継続することに加えて、新たに作出した脱ユビキチン化酵素の破壊株の表現型解析を実施する。 未知の損傷トレランスについては、新たに構築した遺伝子破壊株と遺伝子発現抑制系を用いて、細胞レベルの生理機能解析を実施する。
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Research Products
(10 results)