2018 Fiscal Year Annual Research Report
身体文化の多様な価値を共有するためのスポーツ・アーカイブズのモデル構築
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16H01867
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
來田 享子 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (40350946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 秀昭 中京大学, 工学部, 教授 (10223174)
石堂 典秀 中京大学, 法務総合教育研究機構, 教授 (20277247)
建石 真公子 法政大学, 法学部, 教授 (20308795)
長谷川 純一 中京大学, 工学部, 教授 (30126891)
嵯峨 寿 筑波大学, 体育系, 准教授 (30261788)
渋谷 努 中京大学, 国際教養学部, 教授 (30312523)
荒牧 亜衣 仙台大学, 体育学部, 講師 (30507851)
瀧 剛志 中京大学, 工学部, 教授 (40319223)
荒井 啓子 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (50082938)
木村 華織 東海学園大学, スポーツ健康科学部, 講師 (50634581)
亀井 哲也 中京大学, 現代社会学部, 教授 (60468238)
舛本 直文 首都大学東京, オープンユニバーシティー, 特任教授 (70145663)
田原 淳子 国士舘大学, 体育学部, 教授 (70207207)
清水 敏男 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (70386796)
伊東 佳那子 中京大学, 体育学研究科, 実験実習助手 (80804913)
岩佐 直樹 朝日大学, 保健医療学部, 助教 (90736381)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スポーツ・アーカイブズ / スポーツ博物館 / オリンピック / オリンピック教育 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、①大学および個人が所蔵する「静的な」スポーツ文化資源の収集・リスト化・デジタルデータ化(追加データ3,933点)、②スポーツ文書史料のうち、ブランデージ・コレクション内の書簡および議事録の管理・分析システムの開発(書簡約100通および3回分の議事録をデータベースに追加し、固有表現の拡大およびそれらの関連を求めるアルゴリズムの改良、実装機能の追加)、③オリンピアンに関する情報のデータベース化の検討(類似DBとの差異化の検証)、④スポーツ文化資源を教育・研究に活用するための海外における実践事例情報の収集、⑤利活用シーンを想定した教育実践とその検証、⑥画像データの3D化や「動的な」スポーツ文化資源を展示する技術に関する検討、⑦スポーツにおける人権保護理論の検討をふまえたモデルの検証、を行った。 また、本研究の最終目的は一般市民が「身体文化の多様な価値を共有」を経験する場のモデルを構築することであるため、研究代表者および分担者が所属する大学における3種類の展示会を開催し、研究成果を公表した。これらの3種類の展示会はそれぞれ、①観覧対象を複数世代にまたがる家族に設定する(2018/7/13-7/19「スポーツがつなぐ世界Ⅲ 手のひらに届いたオリンピック」於 中京大学名古屋キャンパス)、②競技人口が少なく、身体的経験の共有度が低いスポーツをテーマとする(2018/10/22-11/4「スポーツがつなぐ世界Ⅳ 燦めきの先にー氷雪に挑む」於 中京大学豊田キャンパス)、③民間保有資料のうち映像資料(16mm)を活用する(2019/3/19-4/26「ムーヴィングイメージ オリンピックの映像アーカイブズ」於 学習院女子大学)、という特徴を持たせ、モデル構築に向けた検証を行った。特に②においては、本研究の課題のひとつである教育における利活用の検討との接合を意識し、来訪者による探索的観覧が可能になるような仕組みを採り入れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、「スポーツはそれが醸成された社会を映す鏡であると同時に、人間の身体を通じて社会に影響を与え、その変容を促すもの(申請書より抜粋)」であり、「このようなスポーツの歴史や現在は、可能な限り多角的に捉えられた『時空間を超えた全体像』として多様な人々の目に触れ、その多様な価値が共有されることを通じ、社会の未来を展望するための『レガシー(遺産)』となり得る(申請書より抜粋)」と考えている。 この研究の枠組みにおいて、収集・デジタル化したスポーツ文化財の展示や教育実践における活用は、一般市民が多様な価値を共有する場のモデルとしての適切性や可能性を検証するために欠かせない。現在、2つの拠点大学(中京大学・学習院女子大学)では順調に一般市民向けの展示を開催し、フィードバックを得ている。デジタル・アーカイブとして共有化を図る文化資源の収集・リスト化・デジタル化についてもほぼ順調に進めることができている。さらに利活用を想定した教育実践は複数の共同研究者によって計画以上の多様な場を確保し進めることができている。 さらに、本研究により、民間保有のスポーツの文化的資源が本プロジェクトに持ち込まれる事例が生じており、想定を超える望ましい波及効果が得られている。一方で、これらをデジタル・アーカイブ化するための人的・財的資源が追いついていない状況がある。 本研究に関わる社会の動向としては、JOCが独自に選手のデータベースを公開したこと、また2019年9月下旬にはJOCによる日本オリンピック・ミュージアムの開設が予定されていることがある。これらの新しい動向を踏まえ、本研究の研究課題において検討する内容を調整する必要性が浮上している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では2016年度の研究開始時から以下の6つの研究課題を設定し、研究を進めてきた。 課題1:展示機能の拡張A(デジタル化による展示空間の拡大)、課題2:展示機能の拡張B(大学という展示空間の拡大)、課題3:文書利用機能の拡張(オリンピック史料デジタル・アーカイブの構築)、課題4:教育機能の拡張(オリンピアン・データベースの構築)、課題5:教育機能の補強(オリンピアン教育システムの構築)、課題6:個の尊重と多様性確保のためのモデル検証。 最終年度には、これらの課題を統合し、研究成果を社会に還元するための最適な提示方法を検討する。ただし、【現在までの進捗状況】に示したとおり、①新たに得られた民間保有のスポーツの文化的資源のデジタル・アーカイブ化の継続、②社会的動向を踏まえた課題4および課題5の研究内容の調整、を行う。特に②については、秩父宮記念スポーツ博物館を所管するJSC、大日本体育協会時代からの関連資料を保有するJSPO、独自のミュージアムを開設するJOC等の中核的スポーツ組織との連携を図り、スポーツの文化的資源のデジタル・アーカイブ化の促進、利活用するための教育プログラムを開発するなど、今後必要とされる課題を浮き彫りにすることによって、本研究の発展的な終了をめざす。 なお、今年度研究期間の後半には、研究代表者が所属する研究機関にスポーツ・ミュージアムが開設される予定である。この施設を新たな研究拠点の一つととらえ、この拠点で本研究の成果として構築された「身体文化の多様な価値を共有するためのスポーツ・アーカイブズのモデル」を提示するとともに、その検証を実施する。これにより、本研究の研究成果を持続的に社会に還元することをめざす。時間的に可能であれば、構築したモデルを教育活動において活用するための教育プログラムの実践を試みる。
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Research Products
(58 results)