2018 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on Colonial Soldiers during WWII: War, Labour and Gender in the Colonial World
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16H01940
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永原 陽子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90172551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟屋 利江 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (00201905)
Bhatte Pallavi 京都大学, 人間・環境学研究科, 特定講師 (30761366)
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
上杉 妙子 専修大学, 文学部, 兼任講師 (90260116)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植民地 / 植民地兵 / 第二次世界大戦 / 労働動員 / 性的動員 / 植民地間関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
第3年度の2018年度には、前年度末に行った国際会議の成果を踏まえ、それを発展させる各自の調査を行い、並行して成果論集の刊行に向けた準備を進めた。 調査として、南アフリカでの防衛相関係文書調査、イギリスでのインド省文書調査、インドでのグルカ兵関連資料調査および聞き取り調査、インド国民軍関連資料調査および聞き取り調査などを行った。また2019年1月には共催者として“International Symposium on African Potentials and the Future of Humanity”を開催した。 これまでの研究で、特に以下の点の重要性が明らかになった。① 戦時の労働動員のスキームは、植民地地域においては、そうではない地域とは異なり、多くの場合「戦争動員」という特殊な動員ではなく、平時の労働動員のそれの延長線上にあった。したがって、植民地住民にとっての「戦場」は「労働現場」の側面を強くもち、動員された人々の経験は地域と同様の「戦争経験」としてではなく、労働動員の戦時的特性としてとらえられる。② 第二次世界大戦期に①の現象が植民地間の強制的および自発的な人々の移動の問題と重なり合っており、それは「帝国」の範囲にとどまらなかった。このモビリティと第二次世界大戦後のナショナリズムに発展する動きとの相関が示される地域がある。③ 女性の性的動員(ここでの「動員」は狭義のそれのみでなく、形の上で「自発的」なものも含む)は、兵士の大量移動に付随する現象として「戦時」の特殊性を強く帯びたものであるが、地域社会のジェンダー関係、都市=農村関係との相関の点で、①②と同じく、戦前・戦後を含む時間軸の中で理解されるものであった。 以上につき、代表者はその編著『人々がつなぐ世界史』に、分担者・協力者は別表のとおりの学会発表ならびに論文に反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度には、当初からの計画通り、各自の調査と論文執筆を中心に研究を進めた。 ただし、2017年度に行った国際会議のキーノートスピーカーの一人が健康上の理由により来日できなかったことの代替の研究会を2018年度に希望したものの、日程調整の都合上実現できなかったことから、その研究会が2019年度に持ち越されることになった。そのため、研究課題のうち性的動員にかかわるテーマの研究に十分取り組むことができなかった。 また、2018年度に予定した韓国での調査・研究会が、先方の研究協力者の健康上の理由により、2019年度に延期となった。朝鮮戦争におけるエチオピア兵派兵の問題を主題とすこの調査・研究会は、「実績の概要」で述べた、第二次世界大戦期をその前後の時期との連続性においてとらえるとの観点で重要なものであったが、このテーマに関する取り組みは最終年度にずれこんだ。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の2019年度には、上述の、二つの持ち越された二つのテーマに十分に取り組むため、年度初めの時点で予定を確定し(2019年10月の性的動員に関する研究者招聘による研究会、同11月の韓国における調査・研究会)、具体的な準備に着手している。 また、とくに力を入れる分野(太平洋地域における動員の問題)のために従来の協力者に分担者となってもらい、強化する体制を整えた。また例年より多くの協力者が、年度前半のうちに調査の予定を組み、最終年度の成果取りまとめのための十分な資料(文書史料および聞き取り)の収集する体制を整えている。
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