2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H02018
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
清田 耕造 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 教授 (10306863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 寿幸 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 准教授 (20456304)
村田 安寧 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (40336508)
寳多 康弘 南山大学, 経済学部, 教授 (60327137)
中島 賢太郎 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (60507698)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際貿易 / 産業集積 / 競争力 |
Outline of Annual Research Achievements |
■ 国際貿易と企業の競争力 国際産業連関表を用いてGlobal Value Chainを分析し,日本の製造業の国際競争力は付加価値ベースで低下していることを明らかにした(Kiyota et al. 2017)。また,輸出企業は生産性やマークアップが高いという既存の結果は,労働市場の完全性を前提としているため,その仮定を緩めて生産関数を推定した(Dobelaere and Kiyota 2017)。さらに,インドネシアのデータを利用して,貿易自由化に伴う価格,数量,品質の変化を分析し(Hayakawa et al. 2017),市場シェアの変化や参入退出が集計生産性に与える影響を分析した(Hayakawa and Matsuura 2017)。この他,環境関連財の貿易自由化が企業の収益力に与える影響を分析し,適切な規制下で自由化されるべきであることを明らかにした(Rui et al. 2018)。 ■ 産業集積と企業の競争力 商業集積と企業の競争力に注目した実証研究を行った。商業集積における周辺企業の多様性など,周辺企業の属性が,企業の売上を向上させ,企業の競争力を高めることを明らかにした(Nakajima and Teshima 2018)。 ■ 国際貿易と産業集積の相互依存 国際経済環境の変化が産業集積や企業の生産性に与える影響について,日本のデータを用いて実証分析を行った。特に自国と近接国間の関税引き下げは,市場近接性に影響を与え,産業立地を変化させることを明らかにした(Nakajima and Okazaki forthcoming)。国際貿易と産業集積を分析するために,さまざまな定量的空間経済モデルが開発されてきたが,代表的なモデルの均衡は,McFaddenモデルから生成されることを明らかにした(Behrens and Murata 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は8件の論文(うち査読付き論文7件),1件の図書を公刊し,26件の学会報告(うち国際学会18回)を行った。また,査読なしの雑誌ではあるものの,今後の研究の指針となるサーベイ論文を1件執筆した。
本研究は,「国際貿易と企業の競争力」,「産業集積と企業の競争力」,「国際貿易と産業集積の相互依存」の3つのテーマで構成されているが,その全てのテーマに関して,査読付き雑誌やその他の学術誌・図書への掲載,あるいは学会報告があった。未公刊の研究成果については,今後も国内外の学会やセミナーで報告し,分析を精緻化した後に,学術誌へ投稿する予定である。
本研究の成果の中には,Journal of Urban EconomicsやJournal of Public Economicsといった経済学の分野でも定評のある査読付き雑誌に掲載されているものもある。さらに当初2019年に開催を予定していた国際研究集会を,1年前倒しで2018年にフランスのパリでEHESS-Keio University Workshopとして開催することができた。この国際研究集会では,Paris School of EconomicsやOECDで活躍する研究者と本研究プロジェクトのメンバーの間で,国際経済学・都市経済学の最新の研究に関する議論が交わされた。これらの成果を踏まえると,プロジェクト2年目の平成29年度は年度当初の研究計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト3年目にあたる平成30年度は,前年度までに得られた分析結果を論文としてまとめ,国内外の学会やセミナーで報告し,論文の改訂を進め,国際的な学術誌に投稿する。特に,「国際貿易と企業の競争力」と「産業集積と企業の競争力」の分析を発展させ,二つの枠組みを統合することにより,企業の競争力の研究をさらに推進していく。 ■ 国際貿易と企業の競争力 現在進めている研究の精度を高めていくほか,企業の直面する国内労働市場の不完全性を考慮した輸出企業の競争力の推定についても分析を進める予定である。また,企業・品目データの分析を拡張し,貿易自由化や輸入競争の激化が製品レベルのマークアップ,限界費用,生産品目の転換に及ぼす影響について分析する。さらに,貿易自由化と環境・健康・安全基準といった非関税障壁との関連について考察を進める。貿易自由化の効果を高めるためには,基準の調和が重要であり,その調和方法が貿易自由化をした域内国の企業と域外国企業に対して,競争上異なる影響をもたらす条件を明らかにする。 ■ 産業集積と企業の競争力 産業集積に関しては,特定の産業に限定されない商業全体のデータを用いることで,商業集積がもたらす競争力上昇効果について一般的含意を導出する予定である。 ■ 国際貿易と産業集積の相互依存 国際経済環境の変化が,産業集積地の企業・工場レベルの生産性・競争力に与えた影響について,個票データを用いた分析を進める。さらに,地域レベルの比較優位や産業集積に注目し,グローバル化への企業の対応が地域間で異なるか分析する予定である。また,これまで定量化されてきた空間経済の諸モデルが共通の起源をもつという結果は,需要分析におけるロジットモデルと代替弾力性一定のモデルとの間の同値性に関連している。需要分析との相違点・類似点を整理しながらさらなる分析を進める予定である。
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