2017 Fiscal Year Annual Research Report
Structure and properties of water confined in the nano-surface and space of carbon nanotube
Project/Area Number |
16H02079
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
本間 芳和 東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 教授 (30385512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
由井 宏治 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (20313017)
山本 貴博 東京理科大学, 理学部, 助教 (30408695)
伊藤 哲明 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 准教授 (50402748)
千足 昇平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50434022)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水分子 / 相図 / 相転移 / 熱力学 / 相転移ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
【CNT内包水の状態計測】直径1 nmの単層カーボンナノチューブ(CNT)に内包された水について、圧力・温度に対する相図を明らかにした。CNT内部ではバルクの水に比較して、固液境界、気液境界ともに低圧・高温側にシフトしており、氷”の融点は圧力とともに上昇した。さらに、固相-液相の変化は急峻な遷移ではなく、固相と液相が共存する領域を有する緩やかな遷移となった。 【CNT内包水の相転移ダイナミクス計測】H28年度に作成した1H-NMR測定システムにより、CNT内包水中1H-NMRスペクトルの温度変化を観測した結果、室温付近では液体状態を表す鋭いスペクトルが、低温では固体状態を表す広いスペクトルが得られ、1H-NMRの観点からも液体-固体変化が確認された。さらにこの液体-固体変化は通常の相転移的ではなく、1次元ナノ空間の特殊性を反映した連続的な変化となっている兆候を見出した。 【親水性表面の構造水の解析】前年度に製作した環境制御セル内においたシリカ表面の水の赤外スペクトルを、表面吸着種からの信号を選択的に計測可能な偏光変調外部反射法を用いて計測した。その結果、水蒸気圧を0.04 Paに保った環境下において、-160℃から-80℃への試料温度の変化に伴って表面水の吸収スペクトル形状が変化した。この結果から、当該温度領域においてシリカ表面水の水素結合構造が変化することを見出した。 【水の構造・物性の理論的解析】グラフェンに凝集した水の分子動力学計算を実施し、低水蒸気圧下ではグラフェン上に1層構造の界面水を形成し、水蒸気圧を上昇させると2層構造の界面水が形成されることを見出した。また、1層構造の界面水の水素結合ネットワークは主として4員環構造によって形成されていることが明らかとなった。一方、2層構造の界面水の第1層目は、主として4員環構造からなる水素結合ネットワークを有するが、2層目は秩序構造が確認できず無秩序構造であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CNTの内包水に対しては、相図の全容をほぼ解明できた。相境界はバルクでは一次相転移であるが、CNT内包水では2相が共存する特異な相変化であることが分った。また1H-NMRの観点からも、液体-固体変化が1次元ナノ空間の特殊性を反映し、通常の相転移とは異なる特異な連続変化となっていることが明らかとなりつつある。 振動分光計測実験については、現在までに、製作した環境制御セルを用いて、低温低圧での環境制御下で、シリカ表面に吸着した水からの振動スペクトル計測に成功し、今後の実験の環境を整えた。理論解析では、今年度までに、物質表面の構造と赤外吸収スペクトルをシミュレートする計算技術を確立しただけでなく、グラフェン表面の界面水の新奇な水素結合ネットワークの存在を明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
【CNT吸着水・内包水の状態計測】単層CNTの中に閉じ込められた水の融点のカイラリティ依存性を単層CNT直径に着目し詳細に分析を進める。さらに、外表面に水が吸着した単層CNTからの蛍光発光スペクトルの低温度帯における温度依存性を明らかにする。蛍光発光波長の温度変化を測定し、バンドギャップの温度変化だけでなく、外吸着水物性の温度変化も考慮し明らかにしていく。ここで得た知見を踏まえて、低温度領域での単層CNTの温度分布や熱物性計測を進めていく。 【CNT内包水の相転移ダイナミクス計測】高純度CNT試料を用い、封入水蒸気圧をコントロールしながら、温度制御下1H-NMRスペクトル測定、スピン-格子緩和率測定を行い、この結果をシミュレーション結果と比較することで、CNT内包水の固体-液体変化時のダイナミクス変化を明らかにする。 【親水性表面の構造水の解析】これまでに、環境制御下でのシリカ表面水のスペクトルと、温度変化に伴うスペクトル変化の計測に成功した。H30年度は、理論計算などと組み合わせて計測されたスペクトルの帰属を行い、環境に伴う微視的構造とその変化を具体的に明らかにする。また、表面近傍数ナノメートルという高い選択性を持つ和周波発生分光法を用いて、表面水の配向角を定量計測する。 【水の構造・物性の理論的解析】H29年までに開発したシミュレーション技術を駆使して、物質表面の新奇な水の構造と各種スペクトル(赤外吸収スペクトルやSFGスペクトルなど)の関係を明らかにする。また、カーボンナノチューブ内包水の相変化現象を解明すべく、内包水のNMRスペクトルシミュレーションを実施し、NMR実験と共同で、1次元空間の水の相変化の物理を明らかにする。
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