2017 Fiscal Year Annual Research Report
Dark matter search at future lepton colliders
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16H02176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 重貴 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (00451625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳田 勉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (10125677)
末原 大幹 九州大学, 理学研究院, 助教 (20508387)
藤井 恵介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30181308)
石川 明正 東北大学, 理学研究科, 助教 (40452833)
山下 了 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 特任教授 (60272465)
竹内 道久 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (60749464)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 素粒子論 / WIMP暗黒物質 / 国際線形加速器実験 / WIMPの直接・間接探査 / 大型ハドロン加速器実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度(計画初年度)での良いスタートを出発点に研究を発展させた。松本は軽いWIMPの領域における有効理論を構築し、その制限と展望を明らかにし、ILC実験において注目すべき過程(探査)を明らかにした。藤井は暗黒物質の荷電パートナーの対生成について、質量差が小さく LHC での発見が困難な場合のシミュレーションを進めるとともに、2フェルミオン過程のシミュレーションを末原と共に始めた。山下は暗黒物質探索の研究をILCの実験環境でいかに行うか、素粒子・宇宙物理の理論の観点と実験手法の両面から研究を進め国際的な研究方針に取り入れることに成功した。また基盤技術となる測定器の分解能と運動量・エネルギー・質量などの運動学的な拘束条件を組み込んだ分析手法を新たに開発した。一方、石川は高輝度電子陽電子衝突実験である Belle 実験での暗黒物質探索が重要であることがわかったことを受け、B中間子がK中間子とインビジブル粒子に崩壊するモードの探索と、D中間子のインビジブル崩壊の探索を行った。LHCにおける暗黒物質探査の研究としては、竹内が超対称模型でヒグシーノとスカラートップが比較的軽く縮退した質量を持つケースを、スピン統計性の異なるUED模型等に拡張し、将来のLHC実験における探索可能性等を明らかにした。また、松本と共に高統計のレプトン不変質量分布等を利用したHL-LHCにおけるEWkino探索の可能性を示した。理論的な進展としては、WIMPと並ぶ極めて興味深い暗黒物質の候補であるAxionの研究が挙げられる。AxionはQCDに存在している深刻な問題であるCPの破れの問題を解決する。このAxionの存在は大局的 U(1)対称性に基づいているが、一般に大局的対称性は量子重力効果によって破れてしまうと考えられている。柳田はこの問題を解決できるAxion模型を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度前半には、国際リニアライダー計画を推進する国際グループが提案した衝突エネルギーを500GeVから250GeVへ変更に関して、その科学的意義に関する議論及び研究が世界的で始められた。この流れを受け、本プロジェクトも多少の軌道変更を要求されたが、本計画のフレキシビリティのおかげでスムーズに計画の修正を行うことができた。その結果、250GeV ILCにおける暗黒物質探査で、どのような種類のWIMPが探査可能であるのか、それらに素粒子理論的、あるいは他の実験でのアノマリーに関わる等の実験的な動機が存在するのか、これらのWIMPを探査するためにどのようなプロセスを今後精査すべきかが明らかになりつつある。この研究に基づいて、単光子過程を用いたWIMP対生成過程、ヒッグスのインビジブル崩壊(WIMP対への崩壊)を用いた探査、フェルミオン対生成の精密測定によるWIMPからの輻射補正の探査、ヒッグスの希少崩壊探査のシムレーションの準備が行われており、本研究は順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
具体的な推進方策は以下のとおりである。松本は、250GeVの衝突エネルギーを持つ将来電子・陽電子衝突実験が現実的になってきたことを踏まえ、どのような種類のWIMPが他の実験・観測に比べ優位に探査可能であるのかを調べる。また具体的にどのような過程について現実的なシミュレーションを行うべきかについても明らかにする。藤井は暗黒物質の荷電パートナーの対生成について、質量差が小さく LHC での発見が困難な場合のシミュレーション研究を完成させる。また末原と共に2フェルミオン過程のシミュレーションを進め、レプトン対生成に加え、クォーク対生成も含めた解析を行い、250 GeV での暗黒物質による輻射補正への感度を明らかにする。山下はkinematic-fittingの基礎であるクォークから派生するジェット現象の測定精度を更に精密化し、この手法によってジェット現象を伴う多くのダークマター生成事象の探索研究を刷新することを目指し、国際的な研究方針の策定において主導的な役割を担う。石川はBelle (II)実験で軽い暗黒物質の探索を行う。探索方法は2つあり、1つは B中間子の崩壊において暗黒物質が生成されるモード、もう一つは電子陽電子衝突において生成される暗黒物質である。竹内は、HL-LHCにおける高統計レプトン不変質量分布の精密測定を利用し、崩壊モードに寄らないEWKino探索の可能性を示した昨年度の研究を、Sommerfeld効果等を取り入れた、より現実的な精度の試算や、量子数の異なる粒子の効果を検討することで、更に発展させる。柳田は、昨年度構築した量子重力の問題を解決できるAxion模型を極めて小さいneutrino massを説明できるSeesaw模型に拡張する。これにより現在の宇宙物理の最大な問題の中の二つの問題(宇宙のバリオン数の生成と暗黒物質)を同時に解決する模型の構築を目指す。
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