2018 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental study of the interaction between two units of strangeness via double-Lambda and Xi hypernuclei
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16H02180
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
仲澤 和馬 岐阜大学, 教育学部, 教授 (60198059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥山 詠美子 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 室長 (10311359)
星野 香 岐阜大学, 教育学部, その他 (70022738)
中村 琢 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377943)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 実験核物理 / ダブルラムダ核 / グザイハイパー核 / 原子核乾板 / 荷電粒子飛跡自動追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年2月に、ビーム照射済み乾板の現像をすべて終了し、グザイ粒子候補飛跡の全自動追跡を開始した。頻繁に起こる似たような角度・位置の飛跡への乗り換えを抑える最適化を進め、5月より本格的な追跡を開始した。その結果、ダブルラムダ核およびグザイハイパー核を、先の実験の2.5倍に匹敵する23例検出することに成功した。その中の1例は、ベリリウムにラムダ粒子が二つ備わったダブルラムダ核であると結論付けることに成功し、美濃イベントと命名した。先の実験で検出した、ヘリウムを芯とするダブルラムダ核(長良イベント)のデータに依存せず、独立にダブルラムダ核の核種を同定するという、本研究の目的の一つが達成できた。 美濃イベントは、日本物理学会の国際的学術誌(Progress Theoretical and Experimental Physics:PTEP)に掲載されるとともに、プレスリリースによりインターネット上で20以上の掲示がなされ、また2紙(科学新聞社、サン)に掲載された。 さらに加えて本年度は、査読3誌に4編を投稿し掲載された。総説が掲載された2誌は、日本物理学会誌(「最近の研究から」)、およびAnnual Review of Nuclear and Particle Physicsである。PTEPに掲載された原著論文2編は、グザイ粒子吸収によりどのような頻度でラムダ粒子が吸着できるかを過去の8倍の統計で示したもの、もう1編は飛跡終端0.1mm程度の飛跡で水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウムおよびホウ素の電荷を識別する手法の開発である。特に後者は、先の実験のグザイハイパー核の核種同定を成功に導き、本研究における核種同定の強力な武器(技術)として期待できるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目標である、グザイ粒子候補飛跡の追跡によるダブルラムダ核及びグザイハイパー核検出はすこぶる順調に進展し、本年7月くらいには一区切りとなり、数十のダブルラムダ核やグザイハイパー核の研修に至ると考えられる。また計画以上の論文も出版されてきた。 一方で当初予定していた、全面探査法の開発に遅れがある。これは、平面画像から三つの分岐点を画像処理で検出するには、あまりに交差する飛跡が多いためである。そのために3次元に飛跡を追跡する方法に移行し、最適化を進めている。その有効性の検証として、静止パイ・プラス粒子から放出されるエネルギーが単一のミュー・プラス粒子の検出を試みた。静止パイ・プラス粒子やミュー・プラス粒子の散乱のシミュレーションと比較しながら、人の目で検出する場合に比して10倍以上の高速検出が可能であることがっ分かった。この過程で判明したのは、シミュレーションとの比較が重要であることである。三つの分岐点検出には、3次元飛跡追跡に加えて種々のパターンを記憶させる機械学習が必要である。 上記のように今後の全面探査には、3次元飛跡追跡と機械学習をキーワードとして開発を進め、早期の実用化を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のようにダブルハイパー核の大量検出を進めてきた結果、10ヶ月でグザイ粒子候補の55%を自動追跡し過去の2.5倍のダブルハイパー核の検出に成功した。しかしこのグザイ粒子追跡によるダブルハイパー核検出の当初見込みは、過去の10倍であり、現状では届かない。真のグザイ粒子を検出できていない可能性がある。それはビーム照射時の乾板の平面性が悪く、半導体検出器が予測する位置と角度にグザイ粒子候補がないなどが考えられるが、早急に原因を突き止め、再探査により当初予定数のダブルハイパー核を提示したい。 また、得られたダブルハイパー核の解析によりラムダやグザイ粒子の原子核への結合エネルギーを求める上で必要な、乾板の密度を高精度に得るために用いる乾板中の自然放射同位元素の崩壊によるアルファ線の数を明らかにする。昨年度確立した、パイ粒子の崩壊に伴って放出されるミュー粒子の検出手法を適用し、ミュー粒子の飛程と既知のエネルギーとの関係を調べ、密度測定をさらに高精度にする。 一方で、グザイ粒子静止点からのエックス線情報の解析を連携研究者とともに引き続き進める。我々の先行研究で、窒素のような軽い原子核とグザイとの間には強い力が働くことが明らかになった(平成29年3月日本物理学会第22回論文賞受賞)が、銀や臭素などの重い原子核におけるグザイ粒子吸収で相互作用を明らかにすべく解析を継続する。 さらに従来の100倍のダブルハイパー核を検出すべく開発を進める全面スキャン法の鍵技術となる、3次元飛跡追跡法の開発をさらに進める。すでに高速駆動顕微鏡は3台を有しており、優秀な研究支援者のもとで実用化をさらに進める。 以上で得られる成果などを取りまとめて、査読誌への投稿や国際会議などで最終年度の報告として発表する。
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