2018 Fiscal Year Annual Research Report
イメージング核分光による銀河内元素合成・循環その場観測
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16H02185
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷森 達 京都大学, 理学研究科, 教授 (10179856)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MeVガンマ線天文学 / ETCC / 気球実験 / 銀河核ガンマ線 / 銀河中心 / 宇宙背景ガンマ線 / 元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
MeVガンマ線観測は超新星爆発での元素合成を核ガンマ線で直接観測できる唯一の窓である。また加速器による不安定核実験からも元素合成が議論されている。しかし宇宙ガンマ線観測は不明確な画像法と高雑音のため結果が少なくデータの比較検討は進んでいない。我々は電子飛跡検出コンプトンカメラ(ETCC)によりMeVガンマ線の完全な到来方向測定に成功しPoint Spread Function(PSF)を定義、PSFで1度の分解能を実現することで、数百のSNの検出が期待される1mCrabの感度の衛星観測装置が実現可能なことを実証した。それを実現するため、まず現在の気球用ETCC観測装置(SMLE-Ⅱ)のPSF10度から5度に改善しJAXA豪州気球を用いて銀河511 keVの精密な銀河面分布を測定、PSFの能力を実証することで宇宙核ガンマ観測に基づく「観測的核宇宙物理学」を始動する。 そのため北半球でのCrab観測用に開発したETCC気球観測装置SMLE-Ⅱの有効面積を約4倍改善する必要がある。具体的には底面PSAの放射長を2倍、TPCガス層を2気圧耐圧に変える。μPICをTPC底部から上部に移動し、また底面PSAをガス層内部に入れられるようにする。同時に側面PSAをTPC内部に設置する。この改善でTPCを飛び出す300keV以上の電子の測定、これらの改善で有効面積を約4倍改善したSMILE-II+装を制作する。H28年度に装置の各要素を開発、H29年度にSMILE-II+として君上げ、調整を行い、H30年3月~4月に予定されている豪州での気球実験を予定通り実施、H30年5月から得られたデータの解析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年1月にJAXAの2018年3-4月での豪州アリススプリングでの気球実験に採択され、29年度ではSMILE-II+気球ガンマ線観測装置を完成させ、H30年1月に豪州に輸送し、3月からアリススプリングで装置の組上げと調整を実施、年度が変わったH30年4月7日に気球の放球を実施、予定通り1日以上の26時間の観測を予定高度の38km異郷の高度で行うことが出来た。 装置も順調に動作し予定したかに星雲、銀河面、銀河中心の観測を無事終えた。終了後すぐに人員の帰還、および装置の日本への返送を行った。装置は5月に研究室に戻った。4月帰還直後から得られたデータの整理を実施、観測時間全体でデータが取得保存されていることを確認、解析作業に入った。 9月の日本物理学会で気球実験の詳細とデータ取得状況、雑音除去が予定通り行えたことを報告、それ以後に銀河中心からの511KEVガンマ線の5σ程度の検出器、かに星雲からは3σの検出、さらに今までほとんど観測されていない銀河拡散ガンマ線の高精度な検出、宇宙背景MeVガンマ線の高精度検出の高い可能性を得、今年3月の物理学会に報告し、高い評価を得た。最初の気球実験で予定以上の解析結果を得ることは今までの50年以上のJAXA気球でも初めてで最大級の成果が期待できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年3月時点の解析ではまだ気球装置の方向精度が不完全で、ガンマ線の到来方向と観測対象天体の方向誤差が大きかった。しかしそれでもかに星雲、銀河中心など天体方向情報が不可欠な対象からも明確な信号を得ている。すでに今年5月には位置補正が完成、今後統計精度の改善を予定している。さらに1MeV以上のガンマ線に対しては高エネルギー散乱電子の再構成法も開発が終了、現在、取得でーたの4割を占めるこの高エネルギーガンマ線のデータ解析も進んでいる。今年夏までには昨年度解析を行った1MeV以下の結果にこの1MeV以上のデータを加え、すべての観測天体の統計精度とエネルギー帯域の改善を行う。また装置の応答巻関数を求めるシミュレーションを完成させ、応答関数を求め、測定したガンマ線のフラックスのスペクトルとその空間分布を求める。この作業を秋までに実施し、論文作成に入る。今年3月までの状況でも今までの宇宙MeVガンマ線観測を大きく凌駕することは確かである。我々のこの革新的な結果を早く論文として世に出し、MeVガンマ線天文学を飛躍的に発展させる糸口とする。
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