2017 Fiscal Year Annual Research Report
化学的相互作用/物理応答の協奏的可逆変換を実現する多孔性導電性磁石の創製
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16H02269
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮坂 等 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50332937)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多孔性配位高分子 / 多孔性導電性磁石 / ガス吸着挙動 / 磁性変換 / 酸素磁性 / リチウムイオン電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
(I) 細孔内に固定された固体酸素を磁気媒介とする磁性体の開発と機構解明:既に見出している酸素と窒素を区別する多孔性磁石について、共同研究者である名古屋大学大学院工学研究科の松田亮太郎教授の研究室で、幅広い温度で酸素雰囲気下PXRD測定を行った。その結果、構造転移と反強磁性磁気転移が独立に振る舞っていることが明らかとなった。また、酸素雰囲気下の構造解析を行うため、放射光施設SPring-8でXRPDを測定した。これらの結果は、これまでの我々の主張を強く支持するものであり、データをまとめて論文として投稿した(現在審査中)。その他、新に酸素吸着で反強磁性体に転移する多孔性磁石、二酸化炭素を吸着してフェリ磁性体から常磁性体に転移する磁石を見出すことに成功した。これらの多孔性磁石の詳細については、今後展開する予定である。 (II) 二電子移動型D2A多孔性常磁性体の開発と活性分子の導入による磁性体変換:物質を感知して格子内の電子移動を誘発し、磁気的性質や電気的性質を変える材料は、近未来の「変わる磁石」の一つのターゲットである。電子移動を誘発するため、磁気変換も劇的に起こり、極めて大きな信号を得ることができる。しかし、実際には、現在までにそのような「ゲスト分子により電子移動を誘発する磁石」はなかった。本研究で始めて「溶媒分子により電子移動を制御する多孔性磁石」を見出した。 (III) 薄膜磁石の分光化学的同定と磁性変換:電荷移動や電子移動が外場に対して敏感な磁性材料を薄膜形状にできると、光を使った高速磁気変換が可能である。そのような分子磁石材料を合成し、薄膜の同定を行った。今後、磁気円二色性分光法(MCD法)により分光学的に磁気変換を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特に、細孔内に吸着した酸素分子の常磁性スピンを感知して、フェリ磁性体から反強磁性体に変化する多孔性磁石を二種見出すことに成功した。このような材料は全く新しく、極めてインパクトが高い。また、多孔性分子材料の新しい方向性を示すものであり、今後の展開に期待が持たれる。一方、二酸化炭素を吸着することにより、磁石が磁石でなくなる(自発磁化がなくなる)材料も見出した。これは、ガス分子吸着で格子内電子移動を誘発し、多孔性材料の性質を全く異なるものに変化させたことに起因する。このような例は初めてであり、今後詳細を詰める予定である。 溶媒分子の脱着で磁気的性質を変える分子磁石を「Magnetic Sponges(磁気スポンジ)」というが、先の例に先行して、溶媒分子の脱着で格子内電子移動を誘発する初めての例を見出した。本結果は、最近Journal of the American Chemical Societyに受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)細孔内に固定されたガス分子を含む単結晶構造解析:上記の発見にもあるように、今後は、「ゲスト誘起の格子内電子移動」を一つの重要な現象として捉え、材料設計の重要な指針としたい。特に、ガス下で電子移動が起こるような材料のガス下単結晶構造解析に挑戦したいと考えている。これまで、PXRDデータからの構造解析がメインであったが、やはり、精密に単結晶構造解析によりガスと格子の相互作用を見ることが重要である。それには、化合物の単結晶安定性が極めて重要になるが、最近極めて安定な化合物を見出しているので、それらの詳細を検討したい。 (2)薄膜磁石の分光化学的同定と磁性変換:本研究テーマは昨年度からの継続であるが、昨年度末に既存のMCDに装着可能なガス導入型クライオスタットが導入されたため、その特殊クライオスタットを使うことにより、薄膜磁性体の分光学的同定と電気化学的スイッチ、ガス導入による磁気変換の分光学的同定を挑戦したい。 (3)新たな物質系の開発:新たな化合物系としてMn(III) salen系錯体とTCNQとの層状化合物を検討する。本研究者の以前の研究により、Mn(III) salen系錯体とTCNQラジカルアニオン間には強い反強磁性的相互作用が働くことが明らかになっている。この系は、[Ru2]/TCNQ系と類似している。本年度中に、新たなD2A型の層状化合物の開発を進める。
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Research Products
(18 results)