2017 Fiscal Year Annual Research Report
Supramolecular Asymmetric Photochirogenesis with Biopolymers as Chiral Reaction Media
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16H02289
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和田 健彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20220957)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不斉光反応 / 不斉合成 / 有機光化学 / 超分子 / 生体高分子 / タンパク質 / 核酸アプタマー / 環境調和型合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新しい不斉合成法として注目されている光不斉反応に、生体高分子を"キラルナノバイオリアクター"として活用した”超分子光不斉反応系”構築に取り組み、適用基質の拡大等により、熱的不斉合成法と補完的で力量ある"環境調和型不斉合成法"としての確立を目指している。 これまでにヒト血清アルブミン(HSA)を不斉反応場とする2-アントラセンカルボン酸(AC)の超分子光二量化反応を詳細に検討し、90%を超える高い鏡像体過剰率 (ee)で光二量体が得られることを報告し、さらに昨年度2,6-アントラセンジカルボン酸(AD)のHSA中での超分子光二量化反応を検討し、溶液系では得られないナフタレン環を有する特異な構造を有する二量体を、ほぼ完璧な生成物選択的かつエナンチオ選択的に合成可能であることを見出した。本年度は、HSAにACとADの2つの光反応基質を取り込ませた系への光照射を検討した結果、AC-ADヘテロ二量体が主生成物として、97%を超える高いエナンチオマー過剰率で得られた。蛍光寿命測定などのデータに基づき、励起状態挙動ならびに励起状態相互作用を詳細に検討し、励起状態ADが寿命内に基底状態ACをアタックし、光励起状態ダイナミックスを活用した新しい光反応系である事を明らかとし、HSAからの極めて効率よいキラル情報伝搬系の構築に成功した。 加えて、本方法論の適用基質拡大を目指し、トロポロン誘導体の超分子不斉光環化反応なども検討し、期待以上の初期的知見を得た。さらに一般性の高い新規不斉合成法への発展を目指し、新規標的基質分子合成にも取り組み、光反応生成物を標的とする核酸アプタマー法に基づく新規超分子不斉光反応用核酸アプタマーの取得と超分子光不斉反応系への活用を指向した基底状態相互作用研究も推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度見出した、従来の基底状態相互作用を活用する超分子不斉光反応系の概念を打ち破る、励起状態ダイナミックスをも活用した超分子不斉光反応系に関する初期的知見を踏まえ、励起状態ダイナミックスの詳細な解析を指向し、基質分子の蛍光寿命、さらにHSAとの各種量論比混合系の基質蛍光寿命変化、そしてホスト分子の蛍光強度・寿命変化などを詳細に検討し、光励起された2,6-アントラセンジカルボン酸(AD)がHSA中を寿命内で移動し、基底状態の2-アントラセンカルボン酸(AC)を攻撃し、極めて高いエナンチオ選択性を発現していることを明らかとした。さらにHSAに対する多彩なAC/AD添加化学量論量での超分子不斉光反応を検討し、ヘテロダイマーのみならずホモダイマーをも高いエナンチオ選択性で得られる系の構築にも成功した。これは、世界最高の光学収率が得られただけでなく、HSAに取込まれたACとADがタンパク質内で動的に励起状態で相互作用し、不斉反応場であるHSAからの極めて効率よいキラル情報伝搬が達成されていることを実証する結果である。本知見に基づき従来とは全く異なる励起状態相互作用を活用した新しい超分子不斉光反応系構築の設計概念の提案に成功した。さらにDNA/RNA合成機を活用したアプタマー合成にも成功し、得られたアプタマーと基質との複合体構造を計算科学手法を駆使することにより、構造推定することにも成功した。 このような予想以上のAC-AD系の進展ならびに、核酸アプタマー法を駆使したキラル反応場構築にも成功したため、ファージディスプレイ法を駆使した新規超分子不斉光反応系構築研究は、核酸アプタマーの知見も活用し、平成30年度に推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である、生体高分子を"キラルナノバイオリアクター"として活用した、”超分子光不斉反応系”の、高効率不斉合成法としての確立、そして水を溶媒とし、クリーンなエネルギーである光と、生分解性の生体高分子を融合した“超分子光不斉反応”を、熱的不斉合成法の補完的で力量ある"環境調和型不斉合成法"としての確立を目指し、引き続きⅠ.血清アルブミン(SA)類を活用した超分子光不斉反応系の力量ある光不斉合成法としての展開と、Ⅱ. 一般性の高い新規不斉合成法への発展を目指し光反応生成物を標的(ハプテン)とするファージディスプレイ法ならびに核酸アプタマー法を駆使したキラル反応場用坑体群の取得と超分子光不斉反応系への活用研究を並行して効率よく推進する。特に平成28年度ならびに29年度の研究推進により取得できたAD系およびAD-AC系の知見に基づき、1.適用基質の拡大、2.触媒的反応系への展開、そして3.実用的合成法としての確立を指向した高分子修飾による固定リアクターへの応用に取組む。 また、平成29年度予想以上に研究が進展したことにより、Ⅱのファージディスプレイ法を駆使したキラル反応場用人工坑体の取得と超分子光不斉反応系への活用研究を加速し、さらなる研究展開に取組む。上記研究戦略に基づき、研究期間内に"生体高分子をキラル反応場として活用する超分子光不斉反応系"を力量ある不斉合成法として確立し、その有効性の実証を目指す。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Peptide Ribonucleic Acid (PRNA)-Arginine Hybrids. Effects of Arginine Residues Alternatingly Introduced to PRNA Backbone on Aggregation, Cellular Uptake, and Cytotoxicity2018
Author(s)
Sugai, Hiroka; Nakase, Ikuhiko; Sakamoto, Seiji; Nishio, Akihito; Nishijima, Masaki; Yamayoshi, Asako; Araki, Yasuyuki; Ishibashi, Satoru; Yokota, Inoue, Yoshihisa; Wada, Takehiko,*
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Journal Title
Chemistry Letters
Volume: 47
Pages: 381-384
DOI
Peer Reviewed
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