2017 Fiscal Year Annual Research Report
水素社会にむけた能動的熱応力活用による超高温高冷却能回転部材の『設計の窓』の探求
Project/Area Number |
16H02304
|
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
岡崎 正和 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (00134974)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 郷志 新潟工科大学, 工学部, 准教授 (20452089)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 水素社会 / 高速起動性能ガスタービン部材 / 熱応力 / 低サイクル疲労/高サイクル疲労相互作用 / 熱過渡応答 / フレッティング / 遮熱コーティング / 冷却孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
将来的な水素社会に向けて期待される超高温で高速起動性能を有するガスタービン発電では,高温度勾配下でかつ高機能な強制的冷却構造を有する超高温回転体が心臓部材となる可能性が高く,従来までは問題にならなかった高温度勾配誘起熱応力への配慮と,その影響を能動的に考慮した高温部材設計指針が求められるようになっている.本研究ではこの類の社会的要求に対し,平成29年度では特に(1)温度勾配誘起熱応力(内部応力)を積極的に活用してクリープ変形を最小化し破損等の確率を最小限に抑えることができる「設計の窓」があることを提案したうえで, (2)注目する課題は特に先進ガスタービン回転翼に施される冷却孔周囲で顕在化する可能性が高いこと,(3)それに対する寿命を予測する基本指方針を提示した. 具体的には,(a)ガスタービン実機条件と同等の温度こう配を与えるために実燃焼雰囲気下で力学的負荷を与える試験装置を自製作した.それを用いてNi基多結晶超合金に対してクリープ・疲労試験を実施し,温度こう配条件下におけるクリープ疲労き裂の発生・進展挙動を調査し,以下のことを示した.すなわち,(b) 試験片内に存在する温度こう配はクリープ疲労特性に有意な影響を与えること,(c)高サイクル負荷が重畳したときの破損寿命は,定常的破損寿命に比べて短くなること,(d)特に冷却孔周りの熱疲労き裂の進展速度は,一定温度条件下の単純な低サイクル疲労下の進展速度よりも著しく加速される,この背景には構造物の過渡的熱応答に起因かつ依存して発生する熱応力が重要な役割を果たしていることを示した上で, (b)~(d) の挙動を予測する方法論を提示した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水素社会にむけた社会的要求に対する工業的な観点からの知見を提供することを目的としている本研究に対し,『研究実績の概要』欄記載の価値は,(i)超高温高冷却能回転部材の設計に関し,温度勾配誘起熱応力(内部応力)を積極的に活用してクリープ変形を最小化し破損等の確率を最小限に抑えることができる「設計の窓」の提案に直接つながること,(ii)先進ガスタービン回転翼に施される冷却孔周囲でそれが顕在化する可能性が高く,寿命予測の方針も提示できたこと,(iii) 将来的に工学的指針を提示する際には,定常状態の熱応力のみならず構造物の過渡的熱応答に起因する熱応力にも大きな配慮が不可欠となることを指摘できたことなどにあり、これらは既存の指針にはなかった知見である.さらに,本研究に関連して公表した成果の波及効果として,権威ある国際会議から基調講演の誘いと,関連テーマの共同研究提案が国際的な研究機関からなされ,一部は論文として公開もできたことは大きな前進である.これらを勘案し,「当初の予定以上に進捗した」と判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で注目している課題が健在化する重要部位は,平成29年度に注目した部位に加えて回転翼埋め込み部になる.そこでは,低サイクル疲労/高サイクル疲労相互作用に加えて,熱疲労とフレッティング疲労現象も重畳する.今後はこの部位に対する課題解決の観点からの検討を行う.すなわち,熱過渡応答と機械的振動に依る高サイクルフレッティング疲労にも配慮し,それに及ぼす高温主要部材の材料であるNi基単結晶材の一次及び二次結晶方位,すべり方向,温度,相手側材料の組合せの影響などについて,表面接触状態の変化や動摩擦係数の変化の調査とともに調べる.具体的には,全面すべり状態下におけるNi基超合金単結晶材の摩擦係数(COF)に及ぼす種々の因子(結晶表面方位,すべり方向,接触/被接触材の組合わせ,試験温度,垂直荷重の大きさ)の影響を系統的に調べ,それらの結果の材料力学的因子との関連性を示す.特に,すべり方向に関連したCOFの相違に注目する.つぎに,フレッティング疲労破損に及ぼす一次及び二次結晶方位,すべり方向,温度,相手側接触材料の影響を実験的に測定しつつ,フレッティング面に生ずる損傷についてもナノレベルの材料解析により調べる.以上の検討をもとに,接触応力場の解析に基づく疲労き裂の発生と伝ぱに対するモデルを構築し,寿命予測手法を提案する. さらに,平成30年度は,研究期間3年間の総括として,構造材料,部材の破損等の確率を最小限に抑えることができる定量的な「設計の窓」概念を探索し,水素化社会に向けた社会的要求に対する課題解決指針として発信する.
|