2016 Fiscal Year Annual Research Report
燃料電池内部での燃焼~微小燃焼から燃焼損傷へ急速に遷移するメカニズムの探求~
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16H02316
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 衡平 九州大学, 工学研究院, 教授 (10283491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 敏明 九州大学, 工学研究院, 教授 (40214788)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アレニウスプロット / DCS / 水素触媒燃焼 / PEFC |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、PEFC内の燃焼損傷の基礎過程を明らかにするために、水素ガスの触媒燃焼のみを切り取った単純化した系で反応速度を解析した。触媒層のみを熱分析装置(DSC)に組み込み、模擬ガスを導入する。このような単純化した系で、ガス組成、温度等の条件に対する水素ガスの触媒燃焼による熱流を計測し、燃焼速度を導出する。 模擬ガスは窒素、酸素、及び水素を含んだ混合ガスとする。電解質膜透過率や、ピンホールを想定して水素ガス濃度を1~3%とする。DSC設定温度を40~80℃とする。なお触媒層に加えて、面積を規定できる白金片も対象とし、DSCを介した速度導出法そのものを検証する。 白金片では水素濃度、温度を上げるほど熱流は増加した。触媒反応はアレニウス型温度依存項に水素や酸素の分圧べき乗を乗じて概略表現できる。熱流の結果は白金片上の燃焼はアレニウス型で整理できることを示唆している。熱流とエンタルピー変化、白金片面積から速度を導出し、アレニウスプロットした。これから求まる活性化エネルギーは30~40 kJ/molであった。反応室圧力などの手法で求めた白金触媒反応の活性化エネルギーと同等であり、本手法に信頼性があることが分かった。 幾何面積を同じにした触媒層の場合の熱流、反応速度は白金片のそれと同じ傾向あった。しかし、①面積が同じであっても触媒層の場合の速度が数10倍大きく、②活性化エネルギーが5~9kJ/molで白金片に比べて小さい。①は触媒層を構成する白金ナノ粒子の有効面積が幾何面積より大きく、②はナノ粒子化により活性向上したからだと考えられる。 以上DCSを介して燃焼速度を計測してアレニウス型反応式と照合して、触媒層における水素燃焼速度の導出に成功した。H29年度以降は、この基礎知見に基づきその場環境における反応律速過程、更に膜劣化が重畳される場での燃焼損傷遷移メカニズムを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要で示したように、目標に対して一定の進捗を得ている。現状、得られた速度式はアレニウス型のものを使用し、この速度式に対して触媒層における水素触媒反応の定量化を済ませ、平成28年度のPEFCその場での燃焼損傷過程の探求の基礎となる。 他方で、より定量性を上げるには、より詳細なメカニズムと、律速過程に注意した速度式も必要である。現在、一連の過程、すなわち気相拡散、多孔質内拡散、吸着、乖離、表面反応、脱離等の各プロセスを抽出、連結して、速度式を導出中である。以上の理由で概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の単純化したPEFC触媒層のみを切り取った系で得た、水素ガスの触媒燃焼の速度とその整理式を基礎に、平成29年度は、電解質膜透過やピンホール通過など速度制約や、実質的な水素濃度も考慮した、PEFCその場においる触媒層での触媒燃焼速度を求める。カソードを閉空間としたバッチ型試験による圧力変化から速度を導出し、平成28年度で得た単純化した系の速度と比較照合し、律速過程を含めて、PEFCその場での反応速度を明らかにする。なおバッチ型試験では、反応による全圧変化から速度を求める手法となるが、セルからのアウトリークによる全圧変化もあり、これが計測そのもの、あるいは得られる速度の精度に影響を与える可能性もある。そこで可視化セルと赤外線カメラによる熱流を介した反応速度計測の方法も適宜検討する。 平成30年度には、以上の基礎知見を基に、力学的、電気化学的負荷を重畳して膜を加速劣化(減肉やピンホール生成)させる劣化重畳場において、触媒燃焼から燃焼損傷に遷移する起点を高解像高速サーマルイメージングにより見極める。更には燃焼損傷遷移に至る因果関係や律速過程を系統的に整理し、電解質膜への最低限の仕様、燃焼損傷の検知法を提案する。
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