2017 Fiscal Year Annual Research Report
非線形モード局在型マイクロレゾネータアレイによる超微小質量計測とバイオセンシング
Project/Area Number |
16H02318
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藪野 浩司 筑波大学, システム情報系, 教授 (60241791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 泰之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (00398637)
松本 壮平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 副研究センター長 (70358050)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 質量計測 / MEMS / 自励発振 / モード局在化 / フィードバック制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体試料観察に向けて、カンチレバーを化学修飾して、生体試料(生体試料を模擬した)マイクロビーズの吸着を試みたが、カンチレバー上に幅広く試料が吸着してしまい、吸着個数(質量)と連成カンチレバーの振幅比との間に相関を見いだせなかった。そこで、あらたに、カンチレバーを液中にいれて、計測質量を吸着する方法に変わって、カンチレバー上に流路を形成する手法を考え出した。すなわち、連成された二つのカンチレバーに別々の流路を設け、片側には計測対象の試料を含んだ液体を流し、残りの流路には試料を含まない液体を流す。そして、カンチレバーの振幅比から試料の質量測定を行うという新しい方法を考案し、現時点で設計が完了している。 連成カンチレバーの振幅比から質量を計測する方法が、これまでの提案方法であるが、質量計測と剛性計測が固有振動という物理量を介して、表裏一体の関係にあることに注目し、連成カンチレバーを原子間力顕微鏡に応用することを提案し、マクロ実験により計測精度の向上が達成できることを明らかにした。 一般に計測時にカンチレバーの振幅が大きくなると、非線形性の影響が強くなり、測定精度が悪化する。そこで自励発振するカンチレバーの応答振幅を低くさせる非線形フィードバック制御を提案し、マイクロ連成カンチレバーによる実験により、有効性を確かめた。この方法は質量測定に限らず、連成カンチレバーを用いた計測法の精度を向上させる汎用的な手法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンチレバーに対する化学修飾によって、生体試料のカンチレバーへの吸着を試したが、修飾した場所以外にも試料の吸着が見られ、適切な方法ではないと結論付けた。一方それに代わり、カンチレバー上に流路形成する方法に方針を転換し、そのMEMS設計が軌道に乗っているため、30年度には計測実験が可能になると予想される。 カンチレバーを自励発振される点が本研究の最大の特徴であり、これまでセンサーが必須であった。これに対し、ピエゾアクチュエータの圧電方程式の構造に注目し、センサーフィードバックを行う代わりに、電気・機械系の連成効果に注目しかつそれを積極的に用いることによって、センサーを必要とせず自励発振させることに成功し、計測精度向上にも寄与すると考える。 さらに質量計測以外に連成カンチレバーによる計測が様々な分野で提案されており、平成29年度はAFMのへの展開が提案できたことは、大きな進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに設計を終了している、流路をカンチレバー上にMEMS技術で実際に構成し、測定質量計測を行う。精度の面でどのぐらいのばらつきがあるのかなど、定量的な評価をしていく。さらに、精度の向上を図るため、カンチレバーのうちの一つ及びカンチレバー間の連成効果をバーチャル(計算機上またはアナログ回路上)に表現することを新しく提案し、さらにこれまで培ってきた技術力を結集して、ハードウエア的にもこれまでにない新たな計測システムを構築する。本手法はこれまでにない、独自性の高い方法の提案であり、特許取得も視野に入る。これによって、カンチレバーを用いている多くの計測法に対して、統一的に精度の向上が可能になることが期待できる。粘度計、流体中で振動する物体に付加される流体の等価質量計測、原子間力、物質自身の粘弾性計測、などがその例である。それぞれのマクロまたはマイクロ実験装置はすでに製作されており、それらを使って実験的な評価を網羅的に行っていくことも今年度の課題である。
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