2016 Fiscal Year Annual Research Report
粒子線がん治療用回転ガントリーを目指した高温超伝導電磁石の高精度磁場発生技術
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16H02326
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
雨宮 尚之 京都大学, 工学研究科, 教授 (10222697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美舩 健 京都大学, 工学研究科, 講師 (20362460)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気機器 / 超伝導電磁石 / 磁場精度 / 遮蔽電流 / 反磁化 / 粒子線がん治療 / 回転ガントリー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.電磁現象シミュレーションモデルの高度化:これまで研究代表者が開発してきた超伝導線内部のミクロスケールの電磁現象をシミュレート可能なモデルを発展させ、モデルの高度化を進めた。具体的には、回転ガントリー用超伝導電磁石のコイルに適用可能な複雑な3次元形状コイルのモデルの高度化、超伝導線の非線形な導電特性の取り込みなどを行った。 2.超伝導線の非線形導電特性の実験的評価:電磁現象シミュレーションのために、多様な温度、磁場下での超伝導線の非線形導電特性(電界E-電流密度J特性)を実験的に評価した。特に、低電界領域のE-J特性が重要なので、これをSQUID 磁化計による磁化緩和特性測定から求めた。 3.変動励磁2極電磁石における多極磁場評価:1で開発したモデルと2で実験的に定めた導電特性を用いて電磁現象シミュレーションを行い、多極磁場の振る舞いに影響を与えるミクロスケールの電磁現象の解明を進めた。レーストラックコイルから構成される2極電磁石をクライオスタットの中で実機同様の20 K 程度まで冷凍機で冷却して実施した多極磁場測定の結果(過去のデータ)と上述の解析結果を比較検討した。 4.変動励磁円形コイルによる磁場安定性の精密評価の検討:照射に利用するステップの初期においては、直前の減磁時の誘導起電力で誘起されている高い密度の遮蔽電流が高い電場により急速に減衰し、発生磁場も急速に変動する可能性がある。この現象を解明するための、小型円形コイルを対象としたホールセンサ磁場測定器による磁場測定について、研究の実施方法について検討し準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下のように、各項目について、所期の成果を得ており、上記のように進捗状況を自己評価した。 1.電磁現象シミュレーションモデルの高度化:鉄ヨークと3次元形状コイルから構成される回転ガントリー用超伝導電磁石の電磁現象シミュレーションが可能となった。鉄ヨークの影響を影像電流としてモデル化した。回転ガントリー用超伝導電磁石のコイルを構成する超伝導線内部の電磁現象をより精密にシミュレート可能になった。 2.超伝導線の非線形導電特性の実験的評価:超伝導線材試料片の磁化を測定し、その緩和から、遮蔽電流の減衰を長時間スケールで支配すると考えられる低電界領域低電界領域のE-J特性を決定することができた。さらに、それを外挿した高電界領域のE-J特性と、通電法により実験的に求めた高電界領域のE-J特性を比較、検討することができた。 3.変動励磁2極電磁石における多極磁場評価:2で得られたE-J特性をn値モデル、Kimモデルで表現しシミュレーションモデルに組み込み、回転ガントリー用2極電磁石を構成する最内層の鞍型コイルを解析対象とし、多極磁場を評価することができた。また、レーストラックコイルから構成される小型2極電磁石の多極磁場の実測値と解析の比較については、2の結果を踏まえて低電界領域のE-J特性の傾きを高電界領域のそれと変えた上で解析を実施し、実測値との一致度を向上させることができた。また、反磁場が磁場精度に与える影響について、計算負荷の軽い2次元モデルにより、磁場再現性、磁場安定性、それらに対する電磁石運転温度の影響について明らかにすることができた。 4.変動励磁円形コイルによる磁場安定性の精密評価の検討:次年度以降の実験に向けて、小型円形コイルの磁場解析を実施し、適切なコイル構成を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、電磁現象シミュレーションモデルの高度化に関しては、Hマトリクス法、誤差修正法などの適用によって、より大規模な問題を高速、高精度で解析できるようにすることを目指す。平行して、超伝導線の非線形導電特性の実験的評価も継続して推進し、高度化したモデルに実験値に基づいて定式化した導電特性(E-J特性)を高度化したシミュレーションモデルに組み込む。また、変動励磁2極電磁石や変動励磁円形コイルなどによる実験や電磁現象シミュレーションを行う。これらの研究を通し、励磁パターンやコイル形状が線材内部のミクロスケール電磁現象に与える影響を解明する。さらに、電磁現象シミュレーションにより、反磁化の影響を抑制し、かつ織り込み、形状精度の高い磁場を発生するコイル形状設計法について検討する。適切な運転温度・励磁速度の設定による磁場安定化法、再現性確保法について検討する。電磁現象シミュレーションによる反磁化の影響を考慮したビーム偏向電磁石の設計に着手する。 平成30年度以降、電磁現象シミュレーションによる反磁化の影響を考慮したビーム偏向電磁石の設計、回転ガントリー全体における線材反磁化の影響を考慮したビーム軌道計算、電磁石電流のフィードフォワード制御・フィードバック制御による磁場補正法の検討、研究成果の総括とプロトタイプ電磁石研究開発の提案と推進していく。
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