2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of automotive silicide thermoelectric battery possessing sufficient power generation ability and long-lifetime
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16H02329
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
飯田 努 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 教授 (20297625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 宏治 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (40270889)
財部 健一 岡山理科大学, 理学部, 教授 (50122388)
森 嘉久 岡山理科大学, 理学部, 教授 (00258211)
中村 重之 津山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80207878)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電発電 / Mg2Si / 高圧合成 / SPring-8 / 非弾性中性子散乱 / Phonon Density of State / 光電子分光 / ホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)新不純物導入による人工的歪導入への局所的高圧下における半導体電子物性:Al添加Mg2Siの大気圧から2.5万気圧下におけるホール効果測定と解析を実施し、キャリア密度、移動度ともに圧力印加による変化は小さいことが明らかになった。また、移動度の温度変化からキャリア(電子)の散乱機構は低温から中温までは不純物散乱が支配しており、中温~室温に掛けては伝導帯間でのキャリア散乱が支配的であることが実験結果のモデル解析から理解された。 (2)電極―Mg2Si界面の混合層精密調査およびMg2Si粒界精密調査と劣化メカニズム解明:熱電池の実用動作温度に近い高温で大気雰囲気に長時間曝された熱電素子について、透過電子顕微鏡を用いて内部組織観察を行い、高温劣化機序を考察した。素子内部に空隙が形成されている場合には、それらを起点に酸化マグネシウム相が形成され劣化に寄与することが知られた。さらに,Wなどを多重添加した原料から焼結した熱電素子では、焼結時に形成された異相が高温劣化を抑制することが示唆された。劣化機構の考察において、表面だけでなく内部組織に着目が重要であることを示すことができた。 (3)Mg2Si粒内・粒界精密調査による熱電特性向上への電子・格子状態評価:SPring-8のBL47に設置されたHAXPESを用いて、電子状態解析を行った結果、ZnとSbの添加により、価電子帯が高結合エネルギー側にシフトすると共に、Fermi準位近傍に光電子強度が観測された。これよりSbは電子を供給するだけで無く,Fermi準位近傍に状態密度を形成することが示唆された。米国Oak Ridge国立研究所でSEQUOIA装置による非弾性中性子散乱測定を行ない、従前にはない熱電発電動作温度域における測定を実施し、データ解析を行なった結果Phonon DOEの結果を得ルことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)新不純物導入による人工的歪導入への局所的高圧下における半導体電子物性:本取組みはMg2Si:Al熱電素子に2万気圧の圧力を加えると電気抵抗が1/10以上低下し、パワファクターが8 mw/K2mという世界最高性能値を得た先行研究結果を参照している。本年度は、電極部のオーミックコンタクト形成に十分に注意払い精度の高いMg2Si:Al熱電素子の高圧力下でのホール効果測定結果を得たが、2万気圧下では電気抵抗が1/10に低下させるのは難しいことが示唆される結果を得た。他方、擬直接遷移型バンド構造を有するMg2Siの創成により当初の目的である高出力Mg2Siを創ることができるとの新たな設計指針を得た。 (2)電極―Mg2Si界面の混合層精密調査およびMg2Si粒界精密調査と劣化メカニズム解明:実用動作温度に近い高温大気雰囲気に長時間曝された熱電素子を、透過電子顕微鏡を用い、内部組織の高温劣化機序を考察した。内部に空隙を有する熱電素子では空隙部から酸化マグネシウム相が形成され劣化する様子が観測された。さらに、Wなどを多重添加した熱電素子では、焼結時に形成された異相が高温劣化を抑制することが示唆された。劣化機構の考察において、表面に加え内部組織が重要であることを示せた。 (3)Mg2Si粒内・粒界精密調査による熱電特性向上への電子・格子状態評価:高輝度放射光を用いたHAXPES測定でSb添加による電子の供給とFermi準位近傍の状態密度の形成が,電気伝導度の向上の起源であることが明らかとなり、当該材料設計を加速させる重要な指針得た。非弾性中性子散乱測定では、事前の予備測定や綿密な打ち合わせの実施、本測定に特化した電気炉を新たに設計したこと等により、当初の目的である、高温でのMg2SiのPDOSを得ることができ、本項にかかる測定はおおむね順調に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)新不純物導入による人工的歪導入への局所的高圧下における半導体電子物性:擬直接遷移型バンド構造を有するMg2Siの創成により頭書の目的である高出力Mg2Si熱電素子を創ることができるとの新たな設計指針を得た。擬直接遷移型バンド構造を有するMg2Siを創成するに一つの方法は単位格子を大きくすればよいことから、そうした試料の入手を検討する。 (2)電極―Mg2Si界面の混合層精密調査およびMg2Si粒界精密調査と劣化メカニズム解明:Ni以外の金属を用いた電極形成、また、高温プロセスを含まない電極作成を行った熱電素子試料について,Mg2Si - 電極界面の精密調査と劣化機構の考察を引き続き推進する予定である。低温プロセスで作成された電極界面は、幅が50μm程度以上と従来試料よりも広く、透過電子顕微鏡向け薄片試料の作成手法の改善が必須となった。その結果、薄片試料の歩留まり向上に寄与し、透過電子顕微鏡を中心とする様々な微細観測技術を利用できるよう体制を整備し測定を実施する。低温プロセスで形成した電極の界面は。Mg, Si, 電極金属の三元相が形成されないことが期待され、これを内部組織観察の面から実証したい。 (3)Mg2Si粒内・粒界精密調査による熱電特性向上への電子・格子状態評価:今年度得た微量不純物と電子状態の関係を基に、今後、元素導入サイトの解析を行い、構造と電子状態の相関を明らかにしたい。X線吸収微細構造(XAFS)測定は微量不純物の導入サイトおよび電子状態を空間分解観測できるため、電気伝導度向上メカニズムの理解を進めたい。非弾性中性子散乱測定は、主に結果の解析を行なう。理論物理学研究者と協議し、バンド計算でのPDOSを計算し、PALDなどを用いて実測値との比較を行う。
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Research Products
(15 results)