2016 Fiscal Year Annual Research Report
AlGaN系超高効率紫外発光素子の実現に向けたキャリア再結合過程の解明と制御
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16H02332
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船戸 充 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70240827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 養一 京都大学, 工学研究科, 教授 (30214604)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電気・電子材料 / 結晶工学 / 紫外光源技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ワイドギャップ半導体AlGaNを用いた深紫外(波長:210~300 nm)領域での超高効率な発光を目指し,非輻射再結合過程の解明・抑制と輻射再結合過程の増強を実現することを目標としている. 輻射再結合に関連して,今年度は,(0001)極性面と(1-102)半極性面の結晶成長条件を検討した.前者は,低圧成長が好ましいとされているが,後者は500Torr程度の中圧成長が表面モホロジーの観点から好ましいことがわかった.この成長圧力を上げることの副次的な効果として,次に述べる点欠陥の抑制が得られることが分かった. 非輻射再結合過程の解明に関して,カソードルミネッセンスによるマッピングを実施した.その結果,室温において通常暗点として観察される線欠陥(貫通転位)付近であっても,点欠陥が支配な非輻射再結合過程であることを明らかにした.これは,Al空孔起因の点欠陥が多数形成されており,キャリア再結合過程を律速していることを示唆している.(0001)と(1-102)面の比較では,後者において点欠陥密度が低減することが示唆されており,熱力学解析の結果も踏まえ,成長圧力を上げることによって成長最表面でのAl分圧が上昇するため,Al空孔系の点欠陥が効果的に抑制される,とのモデルを構築した. さらに,時間分解分光法により,格子不整による線欠陥の導入に関する検討を行い,新たなすべき面を考慮する必要性を実験的に明らかにするとともに,その導入の臨界膜厚を計算するモデルを提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AlGaNの結晶成長に関しては,従来用いられている(0001)極性面とわれわれが提唱している(1-102)半極性面のいずれにおいても,原子レベルで平坦な薄膜を得ることに成功した.この主たる要因は,成長圧力の調整であり,極性面では76Torr,半極性面では500Torrとすることがポイントであった.この原子レベルで平坦なAlGaNを用いることにより,良好な構造特性を持つ量子井戸構造の作製も可能となり,さらに,半極性面では,圧力上昇の副次的な効果として,点欠陥の形成が抑制されることが分かった. 非輻射過程に関しては,カソードルミネッセンスマッピングとフォトルミネッセンスの温度依存性から,点欠陥が支配的であることがわかった.また,実験結果の解析を通じて,少なくとも2種類の点欠陥が存在し,それぞれ異なる特性(活性化エネルギーなど)を持つことも明らかとなった.これまでは,貫通転位(線欠陥)の抑制が発光効率の改善に向けて重要であると,AlGaN系を含め多くの材料系で考えられていたが,むしろ点欠陥の抑制が優先的な課題であることを示している.今後の素子開発の指針を与えるものである. 本研究で得られた成果に対して,IWUMD2016 (Beijing, China, July, 2016), IWN 2016 (Orlando, USA, Oct. 2016),SPIE Photonics West 2017 (San Francisco, USA, Jan. 2017),日独西Workshop on Frontier Photonic and Electronic Materials and Devices (Mallorca, Spain, March 2017)から招待を受け,講演を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
結晶の高品質化は結晶成長条件の検討を継続する. 点欠陥については,物性や起源の解明を目指して光学測定を継続する.加えて,その制御(抑制)に向けて結晶成長中(in-situ)あるいは成長後(ex-situ)プロセスを検討する.n型半導体になりやすいAl(Ga)Nでは,それを補償するためにアクセプタ型の点欠陥が形成されやすいと考えられる.In-situプロセスとしては,成膜条件によって結晶の化学量論比を精密制御し,点欠陥を低減することを目指す.一方,ex-situプロセスとしては,Al蒸気中での熱処理によりAl空孔を低減する方法や,Alイオンを打ち込んで過剰Alを形成し,熱処理によりAl空孔を減らす方法など,いくつかの手法を試みる. 一方,貫通転位(線欠陥)は,点欠陥密度が低減した時にその重要性が増す.その時,低転位のAlNバルク基板結晶が必須となると考えられ,ここでは,新しい,環境負荷の小さなバルク結晶成長技術の開発を目指す.具体的には,Alと窒素ガスを原料とする結晶成長法を検討する.
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Research Products
(21 results)