2018 Fiscal Year Annual Research Report
マルチテレストリアルロコモーションから解き明かす生物の多様な振る舞いの発現機序
Project/Area Number |
16H02351
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石黒 章夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (90232280)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20333643)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | マルチテレストリアルロコモーション / 自律分散制御 / ムカデ / 振る舞いの多様性と適応性 / 脚式ロコモーションと非脚式ロコモーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度において得た成果を以下に具体的に示す: (1) ムカデの脚間協調メカニズムの数理モデル化 前年度に引き続き,セスジムカデが状況依存的に脚運動の疎密波の向きを逆転させる歩容遷移現象に着目し,このような柔軟な脚間協調を実現する発現機序の解明を試みた.ハイスピードカメラで撮影した行動観察実験データを精査した結果,隣接する脚間で物理的な接触を避けるように運動位相の調整が行われていることがわかってきた.そこで,これを可能とする脚間協調メカニズムを新たに考案した.シミュレーションの結果,セスジアカムカデが示す歩容遷移現象を定性的によく再現しうることが明らかになった.この結果は,多脚ロボットの脚間協調メカニズムの「一般解」を与えるものと期待される. (2) ムカデの歩行と遊泳のスイッチングメカニズムの数理モデル化 トビズムカデが培地の物理的特性(陸地か水上か)に呼応して発現する,歩行と遊泳のスイッチングに内在する発現機序の解明を試みた.体節に存在する神経節間の接続を外科的に切断してみたところ,遊泳を行うためには中枢からの指令が,また歩行を行うためには局所的な感覚フィードバックが重要な役割を果たしていることが明らかとなった.この結果に基づいて,歩行と遊泳間のスイッチング現象を説明できる数理モデルをシンプルなかたちで構築することができた.これは,動物ロコモーションの発現において,中枢からの指令と局所的な感覚フィードバックがどのようにせめぎあっているかを示す重要な知見である.次年度では,この妥当性の検証を行う.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由は二つある.第一は,多足類ロコモーションに内在する脚間協調現象を定性的にうまく再現しうる制御原理について数理モデルを構築することができたことである.これは,セスジアカムカデというレトログレードウェーブもダイレクトウェーブも発現するユニークな種に着目したことで可能となったことである.本モデルは,多脚ロコモーションの生成メカニズムを説明しうるモデルの「一般解」を提供することが期待できる.本研究成果は現在,著名ジャーナルへの投稿を目指して準備中である. 第二は,ムカデ(トビズムカデ)が示す歩行と遊泳の遷移現象に内在する制御原理を数理言語で説明することができた点である.本数理モデルは,動物ロコモーションの発現において,中枢からの指令と局所的な感覚フィードバックがどのようにせめぎあっているかの解明につながる重要な知見であり,生物学的な意義もきわめて大きい.本研究成果は現在,著名ジャーナルへの投稿を目指して準備中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
第一に行うことは,本年度に構築した脚間協調メカニズムの数理モデルの妥当性を,ムカデロボット実機を構築して実験的に検証することである. 第二は,歩行と遊泳のスイッチング現象に内在する制御原理に関する数理モデルの妥当性の検証である.シミュレーションだけでなく,検証用のロボット実機の構築も進めたいと考えている. 第三に,神経節間の連絡経路の切断実験や電気生理学的な実験をさらに推し進める.さらに,ムカデ以外にもゲジやゴカイなどの動物を用いた行動観察実験も行い,多脚類が示す柔軟な運動機能に通底する制御原理の解明を目指す.
|
Research Products
(8 results)