2016 Fiscal Year Annual Research Report
想定を超える極大地震動作用時の橋の大規模崩壊現象の解明とその制御法の提案
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16H02359
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 芳顕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90144188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 哲也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20772122)
小畑 誠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30194624)
吉田 純司 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (90345695)
海老澤 健正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90332709)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 耐震構造 / 崩壊制御 / 動的応答解析 / 振動台実験 / 耐震設計法 / 終局挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.終局限界を超える地震に対する橋の崩壊挙動解析と制御の方針の検討:連続高架橋を支持する鋼製橋脚および上路式トラス橋を対象に終局限界後に機能する崩壊防止ケーブルを用いた崩壊制御方法の特性について数値解析による検討を行った.トラス橋については崩壊実験を行い特性と妥当性を検証した. 2.橋の構成要素の載荷実験による破壊挙動同定:トラス格点の破壊実験を行い,破壊挙動を同定した.天然ゴム支承を対象にせん断による破断試験を実施しその挙動を同定した.負反力と橋脚天端の回転等による曲げの影響を考慮した実験も実施し,これらが支承のせん断破壊に与える影響を検討した. 3.橋の構成要素の崩壊モデルの開発:鋼製橋脚,CFT橋脚では崩壊時に極端な大ひずみが生じるために,鋼材の引張り特性は通常の引張試験で直接同定ができない.そのため,引張試験片の変形の局所化を考慮できるFEモデルを構築して逆解析により同定する方法を開発した.また,ゴム支承の構成則には超弾性,塑性を導入してモデル化し,支承単体の載荷実験での挙動に基づき,キャリブレーションを行い破断近傍までのモデルを同定した. 4.橋全体系の崩壊までの挙動を一貫して扱うペタスケールの高度FEモデルの構築:橋脚,格点,支承に関する崩壊モデルを作成し橋脚モデルに組み込んだ. 5.連続高架橋模型の設計・製作と崩壊実験計画:振動台実験による崩壊実験を行う2径間連続高架橋模型(縮尺比1/6.7)の設計・製作を行った.高架橋模型は(1)すべてがT型橋脚の場合,(2)中央橋脚が逆L橋脚の場合の2種類とした.(2)逆L橋脚を持つ高架橋では,「橋脚の耐力到達先行型」と「支承の破断先行型」の2 通りの崩壊状態を想定して支承形状を調整した2タイプの模型を用意した.なお,当初の計画では曲線高架橋模型を製作する予定であったがコストの観点から逆L橋脚を持つ高架橋に変更した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.終局限界を越える地震に対する崩壊制御方針の検討,2.橋の構成要素の載荷実験による破壊挙動の同定,3.橋の構成要素の崩壊モデルの開発の研究項目はほぼ予定通りに実施することができた.さらに,本研究で最もコアとなる連続高架橋の加振による崩壊実験に係る5.連続高架橋模型の設計・製作と崩壊実験計画については,平成28年度に実験の詳細計画の立案およに供試体の設計,製作とを実施するとともに,東アジアで唯一実績のある最大級もマルチ振動台を保有している中国同済大学との実験実施に関する契約を締結することで予定通り平成29年度に実施できる運びとなった.ただ,経費の観点から実験供試体を曲線高架橋から,支承に対してほぼ同等の厳し載荷条件となる中央に逆L橋脚を持つ直線高架橋に変更した.さらに,上路式トラス橋の崩壊実験とケーブルによる崩壊防止実験についても,振動台を用いた加振でFCMを破断させる方法とFCMを人工的に直接切断する方法を数値シミュレーションで検討した結果,両者の差が小さくいことが判明した.これより,より確実に,かつ低コストで実験が可能となる後者の実験手法を採用するとともに,実験を本年度に繰り上げて実施した.したがって,5.については予想以上に研究が進展している.しかし,4.橋全体系の崩壊までの挙動を一貫して扱うペタスケールの高度FEモデルの構築については,ゴム系支承の破壊近傍までの挙動を示す構成則の提示と実験によるキャリブレーションを行うことはできたが,破断条件の提示と破壊挙動のモデル化は若干遅れが生じている.その結果,橋全体系の崩壊までの挙動を一貫して扱うペタスケールの高度FEモデルの完成で若干遅れが生じている.なお,ペタスケールモデルの「京」での高並列化については,ほぼ目標通りの成果が得られた.以上,控えめに見ても,全体としての研究進捗はおおむね当初の予定通りであるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定通り,平成29年度は3種類の2径間連続高架橋大型模型の加振による崩壊実験の実施とそれに基づく橋の崩壊挙動の数値解析法の開発に関する研究の主たるものとなる. 1.連続高架橋の水平2方向加振実験と崩壊挙動の解明:平成28年度に設計したT型橋脚および逆L型橋脚により支持された3種類の2径間連続高架橋大型模型を用いた加振による崩壊実験を中国同済大学のマルチ振動台で実施し,支承,橋脚,上部構造の連成が全体系の崩壊までの挙動に与える影響を詳細に計測する.このとき,ゴム系支承の3次元変形形状と反力6成分の測定には,それぞれ,レーザー変位計とWebカメラからなる変位測定システムと独自開発の高精度6分力計用いる. 2.連続高架橋の加振実験結果に基づく高度FEモデルの補正:加振による崩壊実験結果をもとに,橋の崩壊挙動解析用の高度FEモデルの精度向上を目指す.すなわち,入力データのsensitivity解析を行い,実験に整合するように統一的なモデルcalibrationを行う.橋脚の倒壊や支承の破断までを数値解析で精度よく再現するためには,終局挙動までを再現する一般的な解析と比べて,より大ひずみ領域での鋼材やゴム材料の挙動をモデル化して再現する必要がある.それに対応するため,材料パラメータの調整にとどまらない構成則そのものの変更を伴うcaribrationを必要に応じて実施する. なお,前項の「進捗状況」での記述のとおり,ゴム系支承の破断条件の提示と破壊挙動のモデル化は若干遅れが生じている.その結果,橋全体系の崩壊までの挙動を一貫して扱うペタスケールの高度FEモデルの完成が若干遅れており,これらは本年度への積み残しの検討課題である.しかし,これらの課題の検討は上記の加振による連続高架橋の崩壊実験に関する研究と並行して実施が可能であり,研究の進捗には問題ないと考える.
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