2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H02373
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河野 進 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30283493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Wijeyewick remaA 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (10323776)
渡邊 秀和 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (20620636)
向井 智久 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 主任研究員 (30318208)
丸田 誠 島根大学, 総合理工学研究科, 教授 (30416763)
坂下 雅信 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 主任研究員 (50456802)
谷 昌典 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50533973)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 損傷評価 / アンボンドPCaPC造 / セルフセンターリング / ひび割れ低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,大地震に対しての安全性だけでなく使用性や修復性も重視した設計が建築物に求められている.こうした社会的需要に応える構造形式の1つとして,エネルギー消費要素を兼ね備えたアンボンドプレキャストプレストレスト構造形式による損傷制御型構造の実用化研究を進めている.この構造は,変形を部材端部の圧着面に集中させることで,部材の損傷を最小限に留め,エネルギー消費要素を付加したことで,履歴面積を大きくし,PC鋼材の緊張力により残留変形を抑制したフラッグシェイプ型の履歴特性を実現する.こうした構造形式の一つである靭性型アンボンドPCaPC構造を近年の大震災で建物の継続使用を妨げる要因となったRC造方立壁や袖壁に用いれば,耐震性能及び損傷制御性能を向上させ,地震後の早期復旧に繋がることが期待出来る.本研究では,近年の大震災において建物の継続使用を妨げたRC造方立壁に靭性型アンボンドPCaPC構造を適用し,フラッグシェイプ型履歴特性を持つ靭性型アンボンドPCaPC壁の損傷度を定量化した. 1) 全試験体で,SPダンパーを付加したことによる消費エネルギーの増大且つPC鋼棒による高い原点指向性を持ち合わせた理想的なフラッグシェイプ型履歴特性を得た. 2) 残留変形角に着目すると,全試験体でRm=0.75%まで継続使用可能な状態を示し,最も残留変形が大きかった試験体において,Rm=2.0%まで修復限界Ⅰを上回らなかった.さらに,全試験体で損傷はRm=2.0%まで曲げ引張ひび割れは発生せず,壁端部の圧壊のみであり,靭性型アンボンドPCaPC壁の高い損傷制御能力を示した. 3) 等価粘性減衰定数heqは,SPダンパーを付加したことで,全試験体で小変形時から試験体NSW7Aより2~3倍程度大きい値を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,材料・配筋・形状・構法を工夫して矩形断面を有するRC造壁の耐震性能を向上させ,周辺部材も含めて損傷を抑制し,建物全体の機能維持・早期復旧を可能とする経済的な壁構造システムを提案することである. 1)【一体打ちRC壁】一体打ちRC造壁について,断面形状・配筋方法・材料強度を工夫して,一体打ちの範疇で最も損傷制御に有効な方法を提案する.(強度型での開発) 2)【圧着型PCaPC壁】ロッキング式セルフセンターリングシステムを圧着型PCaPC造連層耐震壁に適用し,壁板や周辺部材の損傷を飛躍的に低減する.(靭性型での開発) 3)【袖壁や方立て壁への応用】上記の損傷制御技術を袖壁と方立て壁に応用し,これまでの地震被害で繰返し問題となってきた2次壁の被害を大幅に低減する.(2次壁への応用) 現在,1)と2)をほぼ終えており,3)に着手したところである.そこで,計画はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
1)得られた部材実験の成果を基にして,損傷制御構造の典型的建物モデル建物を設計し,この建物をモデル化してその構造性能を確認する.実構造物に近い形状の壁モデル試験体にダンパーを配置し載荷を行うことで,各層の変形や部材の損傷をなるべく現実に近い形で再現し,意図する機能維持性能が実現可能であることを検証する.実験結果は,解析モデルで予想および追跡を行い,構築した解析モデルの妥当性も検証する. 2)建物の機能維持・早期復旧に必要な条件をまとめ,提案する構造形式がこれらの条件を満足するための構造特性を明らかにする.さらに,地震動の大きさによりそれぞれの建物の地震時応答と地震後損傷の程度に関して,解析モデルを用いて予想し,機能維持・早期復旧に必要な条件を満足していることを分かりやすくシナリオ化する.
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