2017 Fiscal Year Annual Research Report
結晶サイト工学に立脚した蛍光体の設計及び開発原理の構築
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16H02391
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
垣花 眞人 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50233664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 恒之 東海大学, 理学部, 准教授 (00419235)
佐藤 泰史 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (90383504)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 結晶サイト工学 / 無機材料創成 / 合成プロセス / 蛍光体 / 結晶構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶サイト工学の概念に基づき、近紫外~青で励起可能なEu2+賦活シリケート蛍光体の探索や発光特性の向上を検討した。(1)CaやMg等の小さいイオンを含むシリケート化合物群に対し、高濃度のEu2+を賦活した試料を作製し発光特性を評価したところ、Ca2MgSi2O7:Eu2+ではEu2+の増加に伴う発光波長のシフトは確認されないが、波長450nm付近の励起強度が大幅に増加した。(2)昨年度見出したCa3ZrSi2O9:Eu2+に対して、Zr原料の純度と発光特性との関係を検討したところ、従来のZrO(NO3)・2H2O(98%)に比べて純度の高いZrCl4(99.9%)を用いた試料の発光特性が向上した。従来のZr原料に含まれる1%程度のHfの存在が、Eu2+の発光に影響を与えることが予想される。(3)水溶液法を用いて合成した高濃度Eu2+賦活シリケート蛍光体では、仕込み時のSi濃度が化学量論組成を僅かに上回ると発光強度の大きな低下が見られた。これは、Si濃度の変化がEuの還元状態に影響を与えたことが示唆される。次に、蛍光体の結晶サイト工学の基礎理論構築に向けて、発光波長と結晶の局所構造の相関関係を調査した。これまでに研究代表者らが見出した蛍光体に既報の蛍光体を含めた計128種類の蛍光体の結晶構造と発光波長を調査した。結晶構造のデータベースからホスト内のカチオンのBVSを抽出した結果、128種類中73種類において、BVSと発光波長に良好な相関関係が見られた。相関関係に当てはまらなかった55種類の蛍光体のうち43種類について、配位したアニオンの共有結合性や固溶体形成によるサイトの多重性の影響、結晶場分裂を起こし難い配位構造、特異的にアニオンが固定された結晶構造といった理由によって上記の相関関係から外れることがわかった。結晶構造からEu2+置換蛍光体の発光波長を予測するための基礎理論構築に向けて進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光体の結晶サイト工学の基礎理論構築に向けて大きく前進し、また新規蛍光体の探索と合成においてもいくつかの優れた成果が得られており、おおむね当初の計画通りに順調に進展している。蛍光寿命測定装置は9月に東海大に納入され、東北大、東海大、岡山理科大の教員ならびに学生が活用し、有益なデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎理論の妥当性をさらに検証するため、第一原理計算による構造最適化を行う。またこの理論を用い、赤色などの長波長発光すると予想される結晶構造の候補を抽出し、それらの合成を行うことで、新規蛍光体の開発と理論検証を行う。平成28年度に導入したX線回折装置および平成29年度に導入した蛍光寿命測定装置を活用し、合成・解析・評価をより精密に遂行する。得られた結果をデータベースとして公開することで、国内外の研究者との連携推進を図る。
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Research Products
(37 results)