2017 Fiscal Year Annual Research Report
Systematization of Adamant Thin Films and Fabrication of High-Functional Mechanical Coatings
Project/Area Number |
16H02406
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大竹 尚登 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40213756)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稗田 純子 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40566717)
赤坂 大樹 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80500983)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 構造・機能材料 / 材料加工・処理 / 薄膜 / プラズマ加工 / アダマント |
Outline of Annual Research Achievements |
真空アーク蒸着とマグネトロンスパッタリングを重畳した物理気相成長装置を開発し, ホウ素(B)・炭素(C)・窒素(N)からなる耐熱性や固体潤滑性に優れたアダマント薄膜を作製し,機械的特性等を評価した。DLC膜は黒鉛を用いたアークプラズマ蒸着法により, BN膜は窒化ホウ素をターゲットに用いたマグネトロンスパッタ法により作製した。そして両手法の重畳によりBCN膜を得た。本手法により炭素原子は約60 at.%以上, ホウ素原子は約30 at.%以下, 窒素原子は約7 at.%以下程度の範囲内で, B-C-Nの元素組成比を制御してBCN膜を作製できる。さらに本装置で基板に-100 Vの負バイアス作製した条件で作製した, 元素比がB:C:N=7.9:90.6:1.6のBCN膜,DLC膜およびBN膜を比較して機械的特性の評価を行った。ナノインデンテーション試験より, BCN, DLC, BN膜の硬さはそれぞれ14, 30, 13 GPaであり, BCN膜はBN膜よりも硬いことが示された。次にボールオンディスク法によるSUJ2鋼球との摺動試験の結果, 動摩擦係数はBCN, DLC, BN膜でそれぞれ0.3, 0.04, 0.6であり, BCN膜はBN膜より固体潤滑性に優れることが示された。加熱試験による耐熱性の評価では, BCN, DLC, BN膜の硬さはそれぞれ400, 350, 600 °Cまでは膜表面の色の変化や剥離は発生しないことが確認され, BCN膜はDLC膜よりも耐熱性を有することが明らかになった。以上の結果より, 本研究で開発した手法によりBN膜とDLC膜両方の特徴を合わせ持ったアダマント膜が作製できることを明らかにすることができた。 さらに,予定を前倒しして化学気相成長法によるアダマント薄膜の作製に着手し,ボラジン系誘導体を原料としたa-BCN:H膜の特性評価を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ホウ素・炭素・窒素からなるアダマント薄膜をPVD法で作製するとともに,予定を前倒ししてCVD法による薄膜作製に着手している。さらに重要な防汚性の観点として生体親和性に関する研究を前倒しして進めていることから,当初の計画以上に進展していると判断した。詳細を以下に述べる。 1.開発した物理気相成長装置で作製したBCN膜を,ホウ素・炭素・窒素の三元素による三元図上に示すことが出来た。これは,体系化を目指す本研究の主眼である。BCN膜について,組成比により計23点のプロットを,硬さ,ヤング率,SUJ2との摩擦係数,耐熱温度を含めて行った。そして,BCN膜はBN膜よりも硬く, ヤング率は大きい値を示し, 摩擦係数は小さいという知見が示され,またBCN膜の耐熱温度はDLC膜よりも優れており,この膜はDLC膜とBN膜の両特徴を有することを学術的に明らかにした。 2.ボラジン系誘導体と炭化水素ガスを用い,直流パルスプラズマCVD法によりBCN:H膜を作成することが出来た。この原料は,ジボラン等の有毒かつ危険性の高い原料ガスを利用せずにCVD法によりアダマント膜を作製する際に有効な手段として研究分担者の赤坂が考案したものであり,アダマント膜体系化時に,膜が水素化しているとどのように特性が変化するかを,物理気相成長法で作製した膜と比較しながら明らかにすることで,より汎用性の高い体系化を可能とする。機械的特性は物理気相成長法による膜に劣るものの,摩擦時にはDLC vs. DLCと比較してDLC vs. a-BCN:Hの比摩耗量が低くなる現象がみられ興味深い。 3.生体親和性について,昨年に続き少量のBをDLC膜に導入した系について調べている。これは予定を前倒ししたものであり,0.4at.%程度のBは抗血栓性の改善に有効である反面,B量が多すぎると逆に抗血栓性は低下するという興味深い結果を得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は,アダマント薄膜を体系化し超高機能メカニカルコーティングを実現することを目的とするものである。ホウ素,炭素,窒素の共有結合からなるアダマント材料は高い機械的特性を有し,未来のコーティング材料としての期待が大きいが,材料個々に研究がなされ,薄膜構造と発現機能との関係が体系化されていない。本研究は,アダマント膜の機能と構造との関係を明らかにしながら薄膜材料として体系化し,超耐摩耗性と透明性・防汚性を合わせ持つ理想のメカニカルコーティングを実現する。 物理気相成長法によるアダマント膜について,今年度にBCN三元図上への機械的特性のプロットを開始できたことで,アダマント薄膜の学術的体系化に一歩近づいた,そこでさらに試作したBCN膜成膜装置でアークプラズマガンを調整すること, 炭素ターゲットにBを加えること,窒素をh-BNのスパッタガスに用いることで, より広いB:C:Nの領域でBCN膜の作製することが求められる。また,基板温度をより高温にして,sp2/(sp2+sp3)比を変化させることを考える。このsp2/(sp2+sp3)比については,NEXAFSによる精密な測定を行うことで,アダマント膜の学術的体系化を推進する。さらに,これまでの成果で微量のBの添加がDLC膜の抗血栓性の向上に効果的であることがわかっているので,タンパク質および菌の付着がアダマント膜の構造・表面によりどのように変化するかについて検討を始める。特に,菌の付着しない防汚表面の創成は生体医療分野のみならず食品分野でも希求されている技術であり,今後是非研究を展開していきたい。 また,化学気相成長法によるアダマント膜については,新たな錯体原料を探索したり,窒素を反応場に導入したりすることでB:C:Nの比を変化させること,基板温度を変化させることで,水素量を減少させ,硬さ等の膜特性と水素量との関係を明らかにする。
|
Research Products
(8 results)