2017 Fiscal Year Annual Research Report
木質バイオマス各成分の分解過程での構造制御による化成品製造法の開発
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16H02414
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前 一廣 京都大学, 工学研究科, 教授 (70192325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村中 陽介 京都大学, 工学研究科, 助教 (40756243)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バイオマス / 熱化学変換 / リグニン樹脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はマイクロリアクタを使用した糖類からのフドロキシメチルフルフラール(HMF)高収率製造を検討した。HMFは糖類を酸水溶液中で処理すると得られるが、同条件下ではさらにレブリン酸とギ酸へと過分解する。これを抑制するために考案された二相系反応を適用した。本反応はHMFの油相親和性を利用し、反応相(水相)に抽出相(油相)を添加することで生成HMFを反応相から分離し過分解を抑制するものである。マイクロリアクタを利用すると、スラグ流として知られる二相の流体が流路内を塊状となって交互に流れる特有の流動状態が実現できる。各相では内部循環流が発生し、相間の物質移動が促進される。この特性を利用し、マイクロリアクタを使用した二相系反応を実施した。各種条件を検討し、副生物であるレブリン酸の生成を完全に抑制しつつ、グルコースを原料とし180℃、47 minの処理で76 mol%のHMFを得ることに成功した。原料をグルコース、フルクトースと変更し、それぞれの反応性の違いについて考察し、生産速度向上のためにはグルコースからフルクトースへの異性化反応の促進が重要であることを明らかにした。さらに、微量に発生した他種の副生物より、従来考慮されていなかた変換経路を見出し、今後の収率向上に向けた指針を示した。 続いて、リグニンの樹脂原料化に関する検討を行った。樹脂原料として利用可能なリグニンを高収率で得る前進として、原料リグニンが満たすべき性能を熱分析、分子量分析から判断するための手法を開発した。従来は樹脂原料として利用が困難とされてきたアルカリ処理後変性リグニンについても、有機溶剤を使用して分子量で分画することで原料利用可能であることを見出した。さらに、熱分析による結果を詳細に解析することで、樹脂原料の反応性と、樹脂製造時の温度、時間に関する必要条件の予測を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HMFの製造に関しては、二相系反応をマイクロリアクタを利用して実施することで、HMFの過分解を抑制しつつ、簡便な手法によりこれまでにない高収率でのHMF合成を達成した。この成果はHMF製造の分野において重要であり、学術雑誌への投稿・掲載や国際学会での発表など、様々な手段での対外発信を実施している。リグニンの樹脂原料化に関しても、従来は利用が困難とされてきた成分の利用可能性を示し、今後の展開に向けて高性能な樹脂原料を選択的に得るための指針を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
HMF製造については、判明した課題も考慮し、より詳細に条件をコントロールすることでさらなる収率向上を図る。加えて、生成HMFの単離についても検討する。リグニンについても、確立した利用可能原料判断手法を用いて、種々のバイオマスから選択的に樹脂原料を取得する手法を開発する。
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Research Products
(3 results)