2016 Fiscal Year Annual Research Report
ロケット燃焼室の極低サイクル疲労とクリープ相乗による急速損傷蓄積機構の全容解明
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16H02427
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
佐藤 英一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (40178710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 秀輔 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門(旧、輸送本部), 主任研究開発員 (90744087) [Withdrawn]
西元 美希 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (40450704)
志波 光晴 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料基礎基盤分野, 上席研究員 (70242120)
早川 正夫 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 材料信頼性評価ユニット, グループリーダー (50354254)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロケットエンジン / 銅合金 / クリープ疲労 / 損傷プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
液酸液水ロケットエンジンの高信頼化・繰り返し運用を目指す宇宙先進国に共通する最大の課題は、 燃焼室内壁銅合金のクリープ疲労寿命である。着火・停止による大ひずみ振幅の極低サイクル疲労と定常燃焼中の定応力クリープ変形という、発電プラント等ではあり得ない条件が重畳し、線形損傷則よりもはるかに急な損傷蓄積が生じる。本研究では、クリープ疲労変形中の劣化損傷プロセスを定量的にモデル化し、 広い条件範囲での定量的な寿命予測を行うことを目的とし、以下の成果を得た。 クリープ疲労試験では,毎サイクルの応力保持時に遷移クリープが発現し、サイクルの進行に伴ってクリープひずみが増大した。引張時の最大応力は、サイクルの進行に伴い徐々に減少し、15サイクル後からは急激に減少した。また、クリープ疲労試験における破断までの時間(4,900秒)・サイクル数(19サイクル)は、それぞれ単純クリープ試験(58,000秒)・単純疲労試験(42サイクル)と比較し1/10、 1/2未満であり、大きな寿命低下が見られた。 SEM観察では、15サイクル後に、疲労クラックの先端と、成長したクリープボイドとが粒界において連結し始め、クラック進展が加速することが,ロケットエンジン銅合金の低サイクルクリープ疲労における劣化促進機構であることがわかった。このことは、疲労分野に新しい損傷機構の存在の知見をもたらしたことになると共に、今後、次世代ロケットエンジンの根本的な信頼性向上に寄与すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究結果の最も大きな特徴は、クラック進展経路が終始粒界を選択すること、遷移クリープの発現により積算クリープひずみが、単純クリープに比べ非常に早く蓄積すること、および粒界クリープボイドが進展してきた疲労クラックと連結することである。クリープ疲労試験では,この連結が起こると、わずか数サイクル後に試料が破断した。実機における非破壊検査で必要な、これらの劣化損傷の度合いを正確に検出することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、クラック発生が確認された温度である480℃においてのみ、クリープ疲労試験を実施してきた。今後は、これまでよりも低い温度での試験も含め、高温(750℃)・中温(480℃)・低温(350℃)でのクリープ損傷・疲労損傷の寄与を調査し、各温度域における損傷進展過程を解明することで、劣化促進機構の全体像を把握する。 また、転位セル組織の有無については、EBSD解析やECC観察の他に、XRD測定を用いたCMWP(Convolutional Multiple Whole Profile)法が有効であるとの報告から、EBSD解析、 ECC観察とともにCMWP法を実施することで、本研究で提案された遷移クリープ発現機構の更なる検討を実施する。
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