2016 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation on the formation of ocean wave groups and the ship response
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16H02429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早稲田 卓爾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30376488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宝谷 英貴 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (30636808)
谷澤 克治 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (70373420)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海難事故 / 非線形波動・フリーク波 / ステレオカメラ波高計測 / 船体強度 / 弾性模型船 / データ同化 / アンサンブルシミュレーション / 高次スペクトル法 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋波のスペクトルは時々刻々変化し,波高の統計分布が線形理論からずれる.そのメカニズムとして,準共鳴非線形相互作用によるコヒーレントな波群の形成が重要と考えられる.本研究では,外洋における波面のステレオカメラ計測により,波浪の時空間データベースを構築し,波群の形成過程とその特徴を明らかにすることを目的とする.そして、波群を水槽実験により再現し、遭遇した船舶がどのような挙動を示すかを,船体の縦強度に着目し,実験的に検証する。以下の3点において成果をあげた。 【ステレオカメラによる波面解析】二台のカメラを東京大学平塚総合実験塔に設置し、2017年4月から2018年4月まで計測を行った。ステレオ解析を開始、現地計測の波高との比較を行い誤差の大きさの推定を行った。測定範囲は、奥行き50 m、幅が40 m-70 mの台形領域となる。 【数値計算とデータ同化】この範囲では、典型的な波長(50 m)の波群の特性をとらえることが難しいので、より広範囲の波浪情報を構築するためにデータ同化手法を導入した。モデルはポテンシャル理論に基づく高次スペクトル法を用い、アンサンブル計算による4次元変分法とし(a4DVAR)、手法の妥当性を確認した。また、現象の理解に資する過去の計測フリーク波の統計的特性に資する詳細な解析を行った 【船体運動と船体強度】船体の縦強度に関しては、縦曲げだけではなく、ねじり剛性も考慮するために、ウレタンとPE(ポリエチレン)樹脂板を用いた箱型弾性模型の構築を新たに試み予備実験を行った。その際、PE樹脂のような柔らかい素材に対し、FBG(Fiber Bragg Grating)ひずみゲージによるひずみの計測を実施した。造波に関しては、波群を含む典型的な変調不安定波列(直進)の実験を行った。また、波形の変化に関して検討を行い、非線形を考慮した時空間変形の特徴を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【ステレオカメラによる波面解析】平塚沖におけるステレオカメラによる波面計測を1年間実施し、様々な海象条件下での20分間の観測を90ケース程度(20TB程度)行った。3次元の波面データの解析から、視野内における誤差分布と、超音波式波高計との有義波高の比較による精度評価を行った。カメラから遠い領域や、二つのカメラで共有している視野の辺縁部は誤差が増大することが分かった。また、超音波式波高計との比較から、周期、波高ともに小さくなる傾向が判明した。これは、ステレオカメラ計測の誤差に起因する。平塚の波の特性としては、南西からの伝搬が卓越しているということが分かった。 【数値計算とデータ同化】高次スペクトル法による実海域波浪場の再現をモンテカルロシミュレーションにより行った。大水深係留ブイにて2009年に計測した二つのフリーク波の事例について詳細な検討を行った。その結果、方向スペクトルの広がりの違いにより、局所的に変調不安定が起こり、波形の変形、そして波群の存在時間に影響することを解明した。このことから、広い範囲で波群の発達を観測することの意義が明らかになった。ステレオカメラ画像では、波群全体をとらえることができないので、広範囲での発達を考察するためのデータ同化手法を考案した。高次スペクトル法によるアンサンブル計算を行い、評価関数の勾配と曲率を推定することで効率の良いデータ同化が可能となる。 【船体運動と船体強度】船体縦曲げ、ねじりに関する水槽実験に資する重要な知見として、時間的に周期的な変調不安定波列と空間的に周期的な変調不安定波列との関係を明らかにした。これにより、空間周期的な造波方法(HOSM-WG)による実験結果を一般的な波浪場に対応付けることが可能となる。また、ウレタンとPE樹脂板で船殻を形成するという弾性模型製作方法で、縦曲げおよびねじりの弾性振動を計測できることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
個別の課題において進展はあるが、初年度でステレオカメラの問題が見つかり、2年目に課題を繰り越してカメラの整備を行っている。一方、新たなデータ同化手法の導入など期待以上の成果が出た課題もある。 【ステレオカメラによる波面解析】既存の計測手法で、波高の分布が計測できることは実証できた。一方、検証に課題がある。当初はタワーに設置されている波高計との比較で十分検証ができると想定していたが、これまでの解析から、視野内、そして、視野外における計測が必要であると思われる。この点を次年度に検討する。 【数値計算とデータ同化】空間周期解であっても、フリーク波の周辺では、時間周期解と波形が大きくは変わらないということが判ったため、高次スペクトル法を用いたアンサンブル計算を主たる計算手段とする。そのためには、スーパーコンピューターを用いて大規模な計算を行う必要があるため、その準備を開始する。 【船体運動と船体強度】 箱型船での計測では、熱膨張率の違いに起因し、ウレタンに装着したPE樹脂板が剥離するなど、課題が見つかった。そのため、模型船材料を再検討し、単一素材で船殻を形成するような新たな工作法を考案し、船型の弾性模型を製作する。そして、製作した弾性模型船を用い、波浪中の曳航実験を実施し、縦曲げおよびねじりの弾性振動計測を行う。
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