2016 Fiscal Year Annual Research Report
Time-window of NMDA receptor-dependent LTP during memory formation, consolidation and recall
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16H02455
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
林 康紀 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (90466037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / 記憶学習 / 光増感法 / 細胞骨格 / コフィリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではシナプス可塑性が中枢神経系で起こる時間枠を解明するため、これまでの独自の成果に基づき、LTPの分子メカニズムを応用したLTP操作方法を開発する。LTPを起こしたシナプスではアクチンが重合しシナプスの大きさが拡大すること、この時コフィリンが高密度でアクチン線維上に結合する事を示した。コフィリンはアクチンを脱重合させる機能がよく知られているが、条件によっては寧ろ安定化することがしられており、その作用が現れていると考えられた。そこでコフィリンを何らかの形で不活化することができればLTPを解除できるのではないかという発想に至った。この目的のため、我々はCALIを用い、光にてコフィリンを不活化することを試みた。 本年度は電気生理学的にLTPが実際に解除されることを検討した。このためにアデノ随伴ウイルスベクターにてコフィリンと光増感タンパク質である、SuperNovaとを融合させたタンパク質をマウス海馬に発現させた。その上で電気生理学的記録を行なった。その結果、期待通り一旦成立したLTPを解除することができた。一方、樹状突起スパインの形態的LTP (sLTP)に関しても同様な結果を得ており、この場合、30分まではsLTPが解除されるが、50分の時点ではもはや解除されない。つまり、この手法を用いることで、LTP成立後一定時間のそれを解除できるが、その後起こるLTPには影響を与えないことが見出された。次に受動回避試験を用い行動実験を用い、一度成立された記憶に対しどの段階でCALIの効果があるかを検討した。その結果、学習前にCALIを行なっても記憶には影響はないが、学習後1分で行うと記憶は障害される。その影響は時間が経つにつれ減少し、2時間経過した後には影響はなかった。つまり、この方法を用いることによりLTPを学習成立後に解除することにより、一旦成立した記憶を消去することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ仮説の通りの実験結果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
二年度には一年度に開発された技術を用い、長期記憶の形成過程を調べていく。記憶が長期的に固定化されるのには、一旦成立した記憶が再度活性化され、大脳皮質などに移行していくと考えられており、それが記憶の固定化といわれる。この際に、大脳皮質などでも再度シナプス可塑性が起こっていると想定される。そこで、海馬だけではなく、大脳皮質などで、同様なLTP解除実験を行い、記憶固定の時間経過を調べていく。特に睡眠中に起こるreplayに注目して検討していく。これまでLTPを抑制する方法は有ったが、一旦LTPが成立したシナプスをその他のシナプスに影響を与える事無く解消する事は出来なかったため、学習記憶研究の新たなアプローチとなると期待される。
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