2018 Fiscal Year Annual Research Report
免疫チェックポイント阻害療法のさらなる効果向上を目指した基盤的がん免疫研究
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16H02474
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
玉田 耕治 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00615841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐古田 幸美 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30629754)
安達 圭志 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40598611)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 癌 / 免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究実績は主に以下の2点である。第一に、免疫チェックポイント分子であるPD-1を介した免疫抑制機構において、PD-1のリガンドであるPD-L1とPD-L2がどのような機能を有するのか、その相対的な重要性について検討した。大腸がん細胞株であるMC38を皮下接種したマウスモデルにおいて、抗PD-L1抗体投与では12匹中5匹のマウスで腫瘍を拒絶した一方、抗PD-L2抗体投与では抗腫瘍効果は全く認められなかった。また、抗PD-L1抗体と抗PD-L2抗体の併用投与では、12匹中11匹のマウスで腫瘍拒絶が認められ、抗PD-L1抗体単独投与より有意に高い抗腫瘍効果が認められた。これらの結果から、PD-L2分子は通常の担癌状態では免疫抑制作用を発揮する分子としては機能していないが、抗PD-L1抗体投与などの外的要因によりPD-L1の機能が阻害されると代償的に免疫抑制作用を発揮することが示唆された。そのメカニズムを検討するため、腫瘍組織を構成する細胞群サブセットにおいてPD-L2の発現を解析したところ、腫瘍関連マクロファージにおいて抗PD-L1を投与した場合にPD-L2の発現増強が認められた。以上より、腫瘍微小環境におけるPD-L2の機能や発現制御の一部が解明され、今後さらなる解析を進める予定である。第二に、2017年度の研究により、腫瘍特異的T細胞において、PD-1と連動して発現変化する遺伝子を複数同定した。2018年度はそれらの分子の蛋白発現レベルを解析し、PD-1と類似した発現パターンを示す分子2つを同定した。また、これらの分子のうち一つについては、それに対する阻害剤を投与することで抗腫瘍効果が誘導されることが示され、PD-1と同様、免疫チェックポイント分子として機能していることが示唆された。今後、これらの分子の機能や発現をさらに詳しく解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年間の研究計画の3年目であり、ほぼ当初の研究計画に示された内容通りに進捗している。腫瘍微小環境におけるPD-L1とPD-L2の免疫抑制機能を明らかとした研究内容は論文として発表した(Umezu D, Okada N, Sakoda Y, Adachi K, Ojima T, Yamaue H, Eto M, Tamada K. Inhibitory functions of PD-L1 and PD-L2 in the regulation of anti-tumor immunity in murine tumor microenvironment. Cancer Immunol Immunother. 68(2):201-211, 2019)。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果から、PD-L2分子は通常の担癌状態では免疫抑制作用を発揮する分子としては機能せず、抗PD-L1抗体投与などの外的要因によりPD-L1の機能が阻害されると代償的に免疫抑制作用を発揮すること、PD-L2は主にTAMに発現誘導されることが示された。2019年度以降はさらに詳しい検討に取り組み、PD-L2の代償的免疫抑制作用の発現メカニズムやその意義について検討する。具体的には、抗PD-L1抗体投与によりTAM上にPD-L2発現が誘導される分子メカニズムを解析し、その制御方法の確立を目指す。さらに、PD-L2の代償的な免疫抑制作用について、複数の腫瘍株モデルを用いてその再現性を検証する。これらの結果に基づき、腫瘍微小環境におけるPD-L2発現の重要性を解明し、PD-L2分子のバイオマーカーあるいは治療標的としての意義を検証する。また、次世代シーケンサーを用いた我々が同定した、PD-1と類似の発現パターンを示す分子については、T細胞における免疫チェックポイント機能や抗腫瘍免疫応答に対する抑制機能についてさらに詳細な解析をおこなう。
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