2016 Fiscal Year Annual Research Report
菌根共生におけるキトオリゴ糖シグナリングの分子基盤の解明
Project/Area Number |
16H02548
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋山 康紀 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20285307)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | アーバスキュラー菌根菌 / Mycファクター / キトオリゴ糖 / ストリゴラクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
AM菌が生産する共生シグナルはMyc factorと呼ばれ、現在までにリポキトオリゴ糖(mycorrhizal lipochitooligosaccharide,Myc-LCO)とキチンオリゴ糖が報告されている。しかしながら、これら二つのシグナルによる共生応答は部分的かつ限定的であり、真の共生シグナルが別に存在することが示唆されている。我々は、新たに、部分N-脱アセチルキチン(partially N-deacetylated chitin,DAC)3糖およびキトサン3糖がイネやミヤコグサに対して菌根共生マーカー遺伝子の発現を強く誘導することを見出している。DAC3糖には糖鎖配列の異なる6種類の配列異性体が存在する。DAC3糖の糖鎖配列と共生遺伝子発現誘導との構造活性相関を明らかにするため、DAC3糖の新規合成法の開発を行った。 DACオリゴ糖のようなヘテロキトオリゴ糖の化学合成についてはほとんど報告例がない。そこで始めにグリコシル化反応を行うために保護基の選択を行った。2位のアミノ基がアジド基で保護された糖供与体とフタロイル基で保護された糖受容体をそれぞれグルコサミン塩酸塩から合成し、グリコシル化反応を試みたが反応は進行しなかった。次に、2位がDMM(dimethylmaleoyl)基で保護された糖供与体をグルコサミン塩酸塩から合成し、2位がフタロイル基で保護された糖受容体とのグリコシル化反応を試みたところ、2糖を良好な収率で得ることができた。これらの保護基の組み合わせを用いて、保護3糖の骨格を構築することにした。キトサン2糖を出発物とし、2糖供与体を合成した。これと糖受容体とのグリコシル化反応を試みたところ、良好な収率で目的の保護3糖を合成できた。これを脱保護してGlcN-GlcN-GlcNAcの糖鎖配列を持つDAC3糖を得るために反応条件の検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DACオリゴ糖のようなヘテロキトオリゴ糖の化学合成法についてはほとんど報告例がなく、また、我々にとってもオリゴ糖合成は初めての試みであった。そのため、個々の素反応の掌握から始める必要があったので、初年度はそれ相応に時間を要するものと予想していたが、当初の目的としていた保護DAC3糖の合成を年度内に達成することができた。確立した方法を用いることによりDAC3糖のすべての糖鎖配列異性体を合成することが可能である。次年度中にはDAC3糖のオリゴ糖ライブラリーを完成することができ、共生遺伝子発現誘導における構造活性相関研究に移行できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度において保護DAC3糖の化学合成法を確立することができたので、今後、脱保護の反応条件の検討を速やかに行い、目的とするDAC3糖のすべての糖鎖配列異性体を得ることに尽力する。また、非還元末端側のGlcNAc残基については酵素的にN-脱アセチル化することも可能であるので、化学的手法だけでなく、そのような酵素的手法も組み合わせることでDACオリゴ糖の調製・取得を加速する。
|