2018 Fiscal Year Annual Research Report
菌根共生におけるキトオリゴ糖シグナリングの分子基盤の解明
Project/Area Number |
16H02548
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋山 康紀 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20285307)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アーバスキュラー菌根菌 / Mycファクター / キトオリゴ糖 / ストリゴラクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
還元末端にGlcNAc残基を有する3つの部分N-脱アセチルキチン3糖(partially N-deacetylated chitin trimer, DAC3糖)のうち,未合成であった残り1つのGlcNAc-GlcN-GlcNAcを化学合成により調製した。すでに合成済みのGlcN-GlcN-GlcNAcおよびGlcN-GlcNAc-GlcNAcの計3種のDAC3糖およびキトサン3糖それぞれについて,イネ根におけるAM共生マーカー遺伝子および防御応答関連遺伝子の発現誘導活性についてqRT-PCRにより調べた。その結果、GlcN-GlcN-GlcNAc, GlcNAc-GlcN-GlcNAc, キトサン3糖により共生マーカー遺伝子および防御応答関連遺伝子の発現誘導が見られた。一方,GlcN-GlcNAc-GlcNAcではマーカー遺伝子の発現はほとんど誘導されなかった。続いて,イネのOsCERK1欠損変異体,OsCCaMK欠損変異体にDAC3糖混合物を処理し,マーカー遺伝子の発現誘導を調べた。その結果,野生型と同様に共生マーカー遺伝子および防御応答関連遺伝子の発現が誘導された。OsCERK1およびOsCCaMKは共通共生経路 (Common Symbiotic Signaling Pathway, CSSP) を構成する遺伝子であることから,DAC3糖が活性化する共生経路はCSSPとは異なる経路であることが示唆された。さらに,CSSPを活性化させるAM菌由来の共生シグナルとして報告されているMyc-LCOおよびキチン4糖をDAC3糖と同時に処理し,マーカー遺伝子の発現誘導を調べた。その結果,DAC3糖を単独で処理したものと同様の遺伝子発現プロファイルが認められた。このことから,DAC3糖が引き起こす共生応答はMyc-LCOとキチン4糖の影響を受けないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
還元末端にGlcNAc残基を有する3つの部分N-脱アセチルキチン3糖をすべて合成し、イネ根におけるAM共生マーカー遺伝子の発現解析を進めた結果、これらDAC3糖およびキトサン3糖が従来のMyc-LCOやキチンオリゴ糖が活性化するCSSPとは異なる新規の共生経路を活性化することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
DAC3糖やキトサン3糖の活性化する共生経路はこれまでに発見されていたCSSPとは異なる全く新しい経路である。本経路については、これまでにその存在が示唆されながら、その活性化因子は全く不明であった。よって今後は、DAC3糖やキトサン3糖のAM菌からの生成機構およびイネ根における受容機構、特に受容体タンパク質を明らかにすることで、本新規経路の解明に取り組んでいくこととする。
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