2017 Fiscal Year Annual Research Report
Non-destructive measurement of engineering wood using terahertz time-domain spectroscopy
Project/Area Number |
16H02559
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土川 覚 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30227417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小堀 光 静岡大学, 農学部, 助教 (20612881)
鈴木 滋彦 静岡大学, 農学部, 教授 (40115449)
稲垣 哲也 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (70612878)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テラヘルツ時間領域分光法 / エンジニアリングウッド / 有効媒質理論 / 非破壊計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までで、テラヘルツ時間領域分光システム(透過・反射方式)を設計・試作し、このシステムによって含水率の異なるいくつかの樹種および合板に用いられることの多いベイマツ材のテラヘルツ時間領域スペクトルを測定した。今年度はこれらの結果から複数樹種の含水率・密度・繊維走向を同時に推定する手法を開発した。特に、繊維走向の予測では、木材の複屈折性および二色性の両方を加味してフィッティングを行うアルゴリズムを提案した。またこのフィッティングをもとに得られた屈折率・吸収係数の最大値・最小値から、含水率・密度を推定することでより高い予測精度が得られることを見出した。これらの成果をもとに学会報告を行った。また、様々な樹種および含水率の複素屈折率データおよび複素屈折率から、エンジニアリングウッドの一種である合板の反射スペクトルのシミュレーションを行った。これにより、合板の各層からのシグナルのピーク時間および強度を見積もることが出来た。また、実際に合板を測定し2層目までの情報を取得できる可能性を見出した。 さらに研究を進める過程で、本手法により(木材の強度特性に大きく寄与する)セルロースミクロフィブリル角(MFA)も推定可能であることが示唆された。そこで、X線回折手法(Silviscan)によってMFAや結晶化度および密度などを測定したスギ試料をテラヘルツ時間領域分光システムによって測定した。得られたテラヘルツパルスからテラヘルツ領域複素屈折率を算出し、これを多変量解析することによって上記性質の定量分析を行ったところ、いくつかの性質を高い精度で推定することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画である「THz-TDSによる接着層状況の推定」を遂行した。平成28年度までに蓄積したデータから、より高い精度で木材の各種性質(密度・含水率・繊維走向およびMFA)を推定するアルゴリズムを開発した。また、様々な樹種および含水率の複素屈折率データおよび複素屈折率から、エンジニアリングウッドの一種である合板の反射スペクトルのシミュレーションを行った。これにより、合板の各層からのシグナルのピーク時間および強度を見積もることが出来た。また、実際に合板を測定し2層目までの情報を取得できる可能性を見出した。現在はラミナを様々な樹脂で接着し(メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート系、レゾルシノール系接着剤等を利用)、これらのTHz-TDS測定を行っている。複素屈折率の虚数部を周波数領域で展開(スペクトル表示)し、各接着剤特有の吸収ピークを見出すとともにこれを多変量解析することによって、接着剤に関する判別分析(例えば、物質の同定や存在量の多寡を数値表現しうるSoft independent modelling of class analogy:SIMCA)を行い、その予測精度を確認する予定である。 これらまでの成果を、平成29年度日本分光学会年次講演会、日本木材学会中部支部大会および第68回日本木材学会大会で発表した。これらのことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず反射方式による構成エレメント境界面の情報検出を試みる。そのために反射方式によるより高いSN比での信号検出方式の導入を検討する。導入した測定方式を用いて、構成エレメント境界面における接着状況検出をこころみる。通常のTHz-TDS測定では、透過パルス波形をフーリエ変換して屈折率の実部と虚部を求め、これらを周波数軸でスペクトル展開して何らかの材料物性との関連を調べるのが一般的な解析手順であるが、この方法だとテラヘルツ波が透過した部位の平均的な情報しか得られない。本研究では積層様式のエンジニアリングウッドの品質評価が眼目となるので、各構成ラミナ、とくに境界面での接着状態も非破壊で検出することを考え、材料からの反射パルス波形を直接解析することを検討する。積層様式の物質からの信号には、第1層、第1層+第2層、第1層+第2層+第3層、・・・のパルス波形が混在する。これらのピーク位置および強度が各層の接着状況(接着不良の有無)によってどのように変化するかを、接着不良に対応する箇所(接着剤塗布しない箇所)や接着剤少量塗布箇所を材料内に設けたモデル試料を用いて調べる。
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Research Products
(4 results)